「低学歴の無能は雑用がお似合いだ」
有名大学を出て営業部長の座にいる三島が、そう言い放った瞬間、本社ロビーにいた社員たちの視線が一斉に俺へと注がれた。海外出張から帰国したばかりの俺は、スーツケースを片手にその場に立ち尽くしていた。
「どうせ今回も大した成果はなかったんだろう。高卒だからな」
三島の言葉と周囲の笑い声が耳から離れない。学歴コンプレックスを抱えてきた俺の心を、それは深くえぐった。
しかし、その直後、受付主任のシーナから呼び出しの声がかかる。
「霧原さん、お客様がいらっしゃっています」
振り返ると、そこに立っていたのは欧州の大手企業の副社長、ハンス・ミュラー氏。俺が海外出張で長期間にわたって交渉してきた相手だった。
「ミスター桐原、お久しぶりです」
その一言で、本社ロビーの空気は一変した。三島の顔色が変わる。俺は静かに、しかし確かに、この瞬間の意味を噛みしめていた。
俺は霧原誠。海外に大きな顧客を持つ精密機械メーカー、劇場ワークスの営業部に所属して三十年になる。
今日は二週間に及ぶ海外出張を終え、スーツケースを引きずりながら本社ビルに足を踏み入れたところだった。中には大量の資料が詰まっている。その内容を知っているのは、今のところ俺だけだ。
本社ロビーで三島と待ち合わせた。彼は若手社員を数名引き連れ、俺の姿を眺めるなり笑いを浮かべて近づいてくる。嫌な予感がした。
「桐原、今回も大した成果はなかったんだろう」
若手社員たちがニヤニヤしながら俺を見る。高卒はやっぱり雑用係だよな、と誰かが言った。ロビーにいた社員たちの視線が俺に集まり、何人かが笑った。
俺は何も言い返さなかった。言い返したところで、三島の態度が変わるわけではない。定年まであと数年。ここで波風を立てたくなかった。
それに、娘のみは大学院生で学費もかかる。家族のために、俺は黙って頭を下げた。
高卒で入社して今年で三十七年目。独学で英語を学び続け、十年前に海外営業を任されるようになった。地道に顧客との関係を築いてきた。相手の文化を尊重し、時差を気にせず電話に出る。困った時には真っ先に駆けつける。そうやって積み重ねた信頼が、いつしか海外の主要顧客から熱い評価に変わっていた。
誰も見ていなくても、俺は見ている。自分自身が俺の一番の証人だ。
だが社内では違う。特に三島が部長になってから、扱いは一層ひどくなった。
三島は四十五歳。有名私立大学を卒業し、エリートコースを歩んできた男だ。効率と成果を重視するが、人の心や経験の価値は理解しようとしない。彼にとって学歴は絶対的な指標であり、高卒の俺など眼中にない。
俺が海外出張に行く度に雑用扱いし、報告書も片手で適当にめくるだけ。俺が海外の取引先と地道な交渉を続けているとも知らずに、今回の出張も簡単な営業だと思っている。
だが実際には、今回の出張のメインはある企業との契約交渉だった。その控えが、今俺のスーツケースの中にある。
帰国翌日、俺は契約書のコピーと詳細な報告書を、受付主任のシーナに託した。彼女は重要書類を社長に直接届けられる立場にいるが、それを知る者はこの会社では少ない。シーナは俺の数少ない理解者でもあった。
「承知しました。必ず社長にお渡しします」
「よろしくお願いします」
同時に、三島には簡易版の出張報告書を提出した。部下としての筋を通さなければならない。しかしこの簡易版には、契約のことは最後のページまで確認しないと分からないように記載した。これまで契約が取れたら報告書の一枚目に大きく記載してきたが、三島は重要な部分だけを見て細かい部分はほとんど確認しない性格だと知っている。
この契約だけは、社長に直接報告したい。
案の定、三島はいつもの調子で、最初の数ページだけ報告書に目を通した。彼が重要視しているのは、営業部としての実績が上がる契約が取れたかどうかの部分だけ。まさかここで三島が確認していたことが、後々あんな事態を招くことになるとは。この時の俺は全く予想していなかった。
ロビーで侮辱された後、俺は自分のデスクに向かった。営業部のフロアに入ると、同期の森川が心配そうに小声で声をかけてくる。
「おい、顔色が悪いけど大丈夫か」
「ああ、大丈夫だ」
彼は俺の数少ない理解者だが、定年間近というのもあり、表立って俺をかばって波風を立てることはできないでいる。それでも、その心遣いだけで十分だった。会社から評価されなくても、信頼してくれる人がいるという事実。それだけで心強かった。
その日の夕方、営業部のフロアで朝礼が行われた。
「営業部のみんなに報告しておく。霧原は海外出張から帰ってきたばかりだ」
わざわざ俺を指さす。
「まあ例によって成果はゼロだったがな。これからは雑用係としてみんなをサポートしてもらう」
フロアに笑い声が響いた。俺は拳を握りしめたが、表情には出さないよう努めた。
朝礼が終わると、三島は俺をデスクに呼びつけた。机の上には過去の営業資料やデータの山が積まれている。
「これ全部整理してファイリングしておけ」
この作業は本来、新入社員がやるべき単純作業だ。だが三島はそれを承知の上で俺に押し付けている。さらに三島は俺の出張報告書を手に取り、パラパラとめくって鼻で笑った。
「中身、すっかすかだな」
「詳細は記載してあります。もう一度ご確認いただけないでしょうか」
できるだけ冷静に、丁寧に言った。
「高卒が書いた報告書なんて読まないんだよ」
三島は吐き捨てるように言うと、書類を俺のデスクに投げつけた。報告書は床に落ち、ページがバラバラになって散らばった。周囲が静まり返る。
なぜここまでされなければならないのか。
社員たちはその光景を見ていたが、誰も何も言わなかった。ただ気まずそうに視線をそらすだけ。三島の権力を恐れているのか、それとも俺のことなどどうでもいいのか。
遠くで森川が申し訳なさそうな表情をしていたが、彼も声を上げることはできない。俺は床にしゃがみ込み、散らばった報告書を拾い集めた。一枚、また一枚。手が小刻みに震える。屈辱で胸が熱くなるが、ここで感情を出すわけにはいかない。
屈辱に耐える強さより、家族を守る強さの方がずっと大きかった。
デスクに戻り、黙々と三島から命じられた作業を始めた。古い資料をファイルに閉じ、データを分類し、ラベルを貼っていく。機械的な作業を繰り返しながら、様々な思いが頭の中を巡る。そんな俺を見て、三島は追い打ちをかけるように一言放った。
「低学歴の無能は雑用がお似合いだ」
三十七年間、真面目に働いてきた。海外の顧客からは感謝され、契約を取ってきた。それなのに社内では、高卒というだけで見下され、雑用係扱いされる。だが俺は耐えるしかなかった。あと数年で定年。それまで我慢すれば退職金をもらえる。娘の学費も払える。そう自分に言い聞かせながら、俺は作業を続けた。
その日の夜、帰宅すると妻と娘のみつがリビングにいた。
「お父さん、お帰りなさい」
「おお、ただいま」
俺は会社で起きた辛い出来事を表情に出さないよう、笑顔で答える。
「ご飯、温めておいたわよ」
妻は俺の表情を見て何かを察した様子だったが、気を使ってくれたのか優しく微笑んでいた。みつも温かいお茶を入れてくれる。家族の優しさに触れて、俺は改めて思った。この家族のために頑張ろう。
だが心のどこかで小さな声が響いていた。いつまでこの状況が続くのか。いつまで耐え続けなければならないのか。
その答えは、まだ見えなかった。
その夜、俺はスーツケースから契約書の控えを取り出し、静かに目を通した。欧州の大手企業のCEOの署名が入ったこの書類は、会社の未来を変える重要なものだ。すでに受付のシーナを通じて社長に報告書は届けてある。
だが社長は多忙を極めている。近々一週間ほどの出張もあると言っていた。いつ確認してもらえるのか。焦りと不安が胸の中で渦巻いていた。
見下されることには慣れていた。だが、それが当然だと思ったことは一度もなかった。
数日が経過した。俺は相変わらず雑用ばかりを押し付けられ、本来の営業業務からは完全に外されていた。三島は俺を会議にも呼ばず、重要な案件からも遠ざけ、まるで存在しないかのように扱う。若手社員たちも、部長の態度を見習うように俺を避け始めた。
デスクで黙々と作業をしていると、周囲の活気ある会話が耳に入る。新しいプロジェクトの話。商談の成功談。その輪の中に、俺の居場所はなかった。
ある日の午後、三島は俺を倉庫に呼びつけた。
「古い資料を全部処分しろ。どれが必要でどれが不要か、お前が判断しろ」
「承知しました」
倉庫は埃だらけで、ダンボール箱が山積みになっている。この作業も本来は新人の仕事だ。だが三島はそれを承知の上で押し付けている。汗を拭いながら作業を続けていると、若手社員が通りかかった。
「桐原さん、大変ですね」
「これも仕事だから」
そう自分に言い聞かせることで、なんとか心を保っていた。
ある朝、三島が営業部の主要メンバーを集めて臨時会議を開いた。俺は当然呼ばれていなかったが、会議室のガラス越しに様子が見える。三島が熱心に説明し、若手社員たちが真剣に頷いている。
会議が終わった後、森川がこっそり教えてくれた。
「霧原、三島が新しい海外プロジェクトを発表したらしい。自分が主導権を取るってさ。引き先は欧州の、確かお前が長年付き合ってる企業じゃないか」
その言葉に俺は息を飲んだ。先日の出張で営業してきた、まさにその相手企業だった。俺が長年築き上げてきた相手との契約を、自分が取ると意気込んでいる。俺の報告書をちゃんと最後まで読んでいれば、前回の出張でどんな結果になったのか分かるはずなのに。
社長に報告すべきか迷ったが、ここで社内で騒いでも、さらに嫌がらせをされるだけだろう。俺が伝えても反発するだけだ。それに、三島には社長から伝えてもらう方が効果的だろう。
その日の午後、三島は若手社員を引き連れて俺のデスクの前を通りかかった。
「霧原みたいに何もできないやつを見てると、やる気が出るよな」
大きな声で言う。
「これから俺が本物の営業ってやつを見せてやる」
若手たちは三島に同調し、俺を哀れむような目で見た。俺は何も言わず、ただ黙って資料整理の手を動かし続けた。拳を握りしめる。爪が手のひらに食い込むが、表情には出さない。周囲の冷たい視線が俺の背中に突き刺さる。
その夜、帰宅途中の電車の中で、俺は深いため息をついた。このままでいいのか。窓ガラスに映る自分の疲れた顔を見て、俺は一瞬だけ弱気になった。
だが家に帰ると、娘のみつが笑顔で出迎えてくれた。
「お父さん、お疲れ様。最近疲れてるみたいだけど、大丈夫?」
「ああ、大丈夫だよ。ありがとう」
妻も心配してくれた。
「あなた、体に無理だけはしないでね」
「うん。心配をかけてすまない」
家族の優しさに触れて、俺は再び気持ちを奮い立たせる。やはり早く社長と面談をしないといけないな。支えてくれている家族のためにも、この状況を打破しなければと胸に誓った。
その週の終わり、俺は受付のシーナに確認を取った。
「社長には、報告書届いていますか」
「はい、お渡ししています。ただ社長は海外出張と役員会議が続いていて……」
「そうですか」
シーナは申し訳なさそうに続けた。
「社長のスケジュールが分かり次第、すぐにご連絡させていただきます」
「わかりました。お手数をおかけします」
社長は多忙だ。一般社員の俺との面談の時間を取ることも、そう簡単ではないのだろう。俺は待つしかなかった。
その間も三島の嫌がらせは続いた。コピー、ファイル整理、倉庫の在庫チェック。営業とは全く関係のない仕事を次々と押し付けてくる。窓際社員どころか、社員扱いすらされていない。三島は俺の仕事のやりがいまで奪っていく。俺は黙って耐えたが、心の中では怒りが少しずつ蓄積していった。
別の日、営業部のフロアで三島が電話をしていた。相手は海外の取引先らしい。三島は英語で話そうとしているが、基礎的な会話はできても、細かいビジネス交渉の英語になると明らかについていけていない。
その光景を見て、俺は複雑な気持ちになった。三島は学歴を誇り、効率を重視する。だが実際の現場では、俺が長年培ってきた語学力や経験には遠く及ばない。それなのに、俺の実力を認めようとしない。三島が見下していたのは、単なる高卒という学歴だけではなく、俺が培ってきた努力と誠実さそのものだった。
ある日の夕方、受付のシーナから報告があった。
「桐原さん、来週の月曜日、社長との面談の時間が確保できました」
「本当ですか。ありがとうございます」
ようやく社長に正式に報告ができる。俺は胸を撫で下ろした。
「桐原さん、いつも大変そうですね。でも社長はちゃんと報告書を読まれています。必ず霧原さんの努力は報われます」
その言葉に、俺は少しだけ救われた気がした。
週末、俺は久しぶりに家族とゆっくり過ごした。社長との面談の日程が取れた安心からか、心を落ち着かせることができている。みつが大学院の研究について楽しそうに話し、妻も俺の好きな料理を作ってくれた。この穏やかな時間が、俺にとって何よりも掛け替えのない時間だ。
「来週か。ちょっと待ち遠しいな。でもありがたいな」
社長との面談が近づくにつれて、俺の中で決意が固まっていった。三十七年間真面目に働いてきた。その努力を、会社のために正しく報告する。俺は社長に渡した報告書の内容を頭の中で整理した。相手企業との交渉内容を何度も思い返し、漏れがないか確認する。簡潔に、しかし重要性が伝わるように、俺は言葉を選びながら準備を進めた。
迎えた翌週の月曜日の午前中、俺がデスクで資料を整理していると、営業部のフロアに緊張感が走った。今日は午後に社長との面談が予定されている。最終確認をしていたところだった。
俺のデスクの電話が鳴った。受付のシーナからだった。
「霧原さん、欧州の大手企業の副社長がお見えです。桐原さんに会いに来たとおっしゃっています」
「え、今ですか」
俺も驚いた。確かに先日の出張で交渉をした相手だが、来日するという話は聞いていなかった。その通話を見ていた三島が、俺のデスクに近づいてくる。
「誰からだ」
「受付からです。欧州企業の副社長が来られたと」
三島の顔色が変わった。
「欧州企業の副社長が? お前に勝手な行動は許さん。俺も同席する」
「承知しました」
俺と三島は急いで本社ロビーに向かった。向かうエレベーターの中で、三島は俺に釘を刺してくる。
「この前の出張で営業した企業か。お前が対応しても、どうせロクなことにはならない。いいか、余計なことを言うなよ」
「はい」
俺は三島の言葉を半分で聞きながらも、内心では欧州企業の副社長がなぜ来られたのか気になって仕方がなかった。確かに契約は無事に取れた。なぜ急に。もし契約に不満があったのなら、わざわざ来日はされないはずだ。不安と期待が交錯し、答えを見つけきれずにいた。
エレベーターのドアが開き、ロビーに足を踏み入れる。そこには見覚えのある人物が立っていた。欧州の大手企業の副社長、ハンス・ミュラー氏。彼は先日の出張で何度も顔を合わせた人物で、最終交渉の際にCEOと共に立ち合っていた。
ミュラー氏は俺を見つけるなり、満面の笑みを浮かべて手を差し出してきた。俺は彼と握手を交わし、流暢な英語で会話を始める。三島は一体何が起こっているのか、理解が追いついていない様子だ。
ミュラー氏は通訳を同行していた。
「ミスター桐原、お久しぶりです」
「お久しぶりです。急なご来訪で驚きました」
「契約の件で直接お礼を言いたくて参りました」
ミュラー氏は俺の手を両手で包み込むようにして握った。
「あなたの度重なる誠実な交渉に、我が社は大変感動しました。この契約は我々にとって非常に重要なものです」
その瞬間、三島の顔色が変わった。
「契約だと?」
三島は俺とミュラー氏のやり取りを呆然と見つめ、驚きを隠しきれない表情だ。
「明日、CEOのシュミット本人も来日する予定です。彼もあなたに直接お礼を言いたいと申しておりました」
「それは恐縮です」
俺は謙遜しながら答えた。それと同時に、ミュラー氏が契約のことを喜んでくれていたことに安堵する。三島は終始無言で、表情も硬く青ざめている。それもそうだろう。自身が契約を取りに行こうと意気込んでいた相手企業が、すでに俺の交渉で契約成立していたのだから。
「明日、CEOのシュミット本人が来日します。御社の社長も同席されると伺っております」
「承知しました。お待ちしております」
ミュラー氏が帰った後、ロビーには多くの社員が集まっていた。彼らは俺とミュラー氏の親密な様子を、驚きの表情で見つめていた。俺を見る目が明らかに変わっている。その中で、三島だけが蒼白な顔で立ち尽くしていた。
その時、受付カウンターにいたシーナが俺に近づいてきた。
「桐原さん、お疲れ様でした。今日予定していた社長との面談ですが、明日のCEO来訪に合わせて変更となりました」
「わかりました」
「社長からは、明日の方がより良いタイミングだろうとのことです」
「なるほど。そうですね。ありがとうございます」
そのやり取りを見ていた三島が、自身が全く介入できなかった苛立ちを隠せずにシーナに声をかけた。
「おい、受付」
シーナは丁寧に振り返る。
「はい。何でしょうか」
「勝手なことをするな。予定のことなら、まず部長である私に話を通さないとはどういうことだ」
「失礼しました。社長からの桐原さんへ個別でのご指示でしたので」
「受付が口答えするな」
シーナは表情を変えず、丁寧に頭を下げた。
「申し訳ございません」
そう言って、シーナは受付カウンターに戻っていった。俺はその光景を見て胸が痛んだ。俺に対してのみならず、数少ない理解者であるシーナにも罵声を浴びせるなんて。
だが明日、全てが変わる。
その夜、俺は一人で書斎にこもった。これまでの屈辱、理不尽な扱い、そして今日シーナが侮辱されたこと。全てが走馬灯のように頭の中を巡った。
もう我慢する必要はない。三十七年間の沈黙が、明日言葉となって響き渡る。
翌日の午前中、俺は倉庫で在庫整理の作業をしていた。三島から押し付けられた仕事だが、午後のCEO来訪前に気持ちを落ち着かせるためにも、黙々と作業を続ける。内心待ちきれずにいたこの時だが、いざとなると緊張が止まらない。
そこへ、受付のシーナが書類を持って尋ねてきた。
「桐原さん、午後の会議の資料です」
「シーナさん、ありがとうございます」
「今日は大丈夫ですよ。きっといい結果になります」
その優しい言葉に、俺は少しだけ緊張が和らいだ。
「昨日は三島部長に、すみませんでした」
「いえ、私は大丈夫です。桐原さんこそ、ずっと大変でしたね」
そのタイミングで、三島が倉庫に入ってきた。
「おい、桐原。在庫整理はまだ終わってないのか」
「もう少しで終わります」
三島はシーナを見て、不機嫌に言い放った。
「受付が営業部の倉庫で何をしている」
「失礼しました。会議の資料をお届けに」
「受付の分際で偉そうに。お前の仕事は電話番とお茶出しだけだろう」
シーナは冷静に答えた。
「申し訳ございません」
三島はシーナが俺の肩を持っていると感じたのだろう。苛立ちを隠せず、さらに言葉を続けた。
「さっさと受付に戻れ。お前も無能なのか」
その言葉に、俺の中で何かが切れた。これまで自分がどれだけ侮辱されても耐えてきた。家族のため、生活のため、全てを我慢してきた。だが、俺を影で支えてくれている彼女まで傷つけることは許せなかった。
「部長、シーナさんは資料を届けに来てくれただけです」
三島は俺を睨みつけた。
「お前に指図される覚えはない。高卒のくせに生意気だ」
そのやり取りを見ていたシーナが、気を使って丁寧に頭を下げた。
「お仕事中に邪魔をしてしまい、失礼いたしました。では、これで」
シーナは表情を変えず、倉庫を後にした。俺は拳を握りしめたが、ここで感情的になるわけにはいかない。午後、全てが変わる。
三島が去った後、俺はシーナを追いかけた。
「シーナさん、さっきはすみません」
「いえ、大丈夫です。桐原さんがかばってくださって、嬉しかったです」
「午後、よろしくお願いします」
「はい。桐原さんの努力が必ず報われます」
その言葉に、俺は勇気づけられた。
そして午後、運命の時が来る。受付から内線電話がかかってきた。シーナの声だった。
「桐原さん、欧州からのお客様で、CEOのシュミット様がお見えです」
「今すぐ行きます」
俺は急いでロビーに向かおうとしたが、その時三島が俺を呼び止めた。
「こんな重要な会議、俺も同行する」
「承知しました」
二人でエレベーターに乗り込み、ロビーへと向かう途中、三島は俺に嫌味を言ってくる。
「ちょっと流暢に英語が話せるだけで調子に乗るなよ」
三島は俺の交渉力をまだ認めずにいる。今日の会議で自分のアピールをしようとしているのか、それとも何かまた嫌がらせを企んでいるのか。どちらにしても、俺は全力で会議に挑むだけだ。社長がどんな反応を示すのかが気がかりではあるが、しかしそんな心配は杞憂に終わることになる。
エレベーターのドアが開き、ロビーに足を踏み入れた瞬間、俺の目に飛び込んできたのは見覚えのある人物だった。欧州の大手企業のCEO、ヨハン・シュミット氏。彼は先日の契約交渉で最終決定権を持ち、俺が最も多く交渉を重ねた相手だ。
シュミット氏は俺を見つけるなり満面の笑みを浮かべ、手を強く握りながら感激した様子で何度も頷いた。通訳を介して語りかけてくる。
「ミスター桐原、早くあなたに直接お礼を言いたかった。本当にありがとう。あなたのおかげで、我が社は大きな一歩を踏み出すことができた」
その瞬間、三島の顔色が完全に変わった。俺とシュミット氏のやり取りを呆然と見つめ、自分の入り込む余地がないと気づいている。まさかこれほどまでに信頼関係が築かれていたとは思わなかったんだろう。
通訳が言葉を続ける。
「この契約は我々にとって歴史的な意味を持ちます。あなたの誠実さ、専門知識、そして何より人間性が素晴らしかった」
「恐れ入ります」
俺は恐縮しながら答えた。その時ロビーには多くの社員が集まっていた。海外大手企業のCEO来訪ということで、一目見ようと駆けつけた人たちだ。彼らは俺とシュミット氏の親密な様子を、驚きの表情で見つめている。
「社長にも直接お礼を伝えたい」
俺たちが降りてくるまでシュミット氏の対応をしていたシーナが答える。
「はい。社長はすぐに降りて来られます」
そう、今日は社長も会議に参加する予定だった。
数分後、社長が現れる。社長はシュミット氏を温かく迎え、握手を交わした。
「当社の桐原さんは素晴らしい人物です」
「そうですか。それは嬉しいですね」
「彼は我が社では伝説の交渉人、ミスター桐原として知られています」
社長は驚いた様子だ。
「伝説の交渉人……桐原君、それは本当ですか?」
「いえ、私はただ何度も足を運ばせていただいただけです」
俺は謙遜したが、シュミット氏は通訳を通して断言した。
「いいえ、事実です。そして何と言っても、今回の契約は数十億円規模の長期取引です」
その言葉に、ロビーがざわめいた。一度の契約で数十億円。三島はもはや挨拶すらできず、空気と化していた。
単なるトライアル契約じゃなく、数十億円規模の契約だと? 俺への報告書には、そんな重要なことは書いてなかったはず。自分が全く知らなかった事実が次々と明らかになり、言葉を失っている。その表情には焦りと動揺が滲んでいた。
社長が提案した。
「詳しい内容は、会議室で話しましょう」
その時、シーナが前に出る。
「社長、会議室の準備が整っております。こちらへどうぞ」
三島が苛立ちを隠せず言い放った。
「受付が出しゃばるな。社長、会議室へ私がご案内します」
その瞬間、社長が三島を鋭く見た。
「三島部長、シーナ君は私の秘書でもある。彼女の指示に従ってくれ」
「え? 秘書?」
シーナは丁寧に頭を下げた。
「私は受付主任であると同時に、社長秘書も務めております。この度のCEO来訪も、社長のご指示で私が調整させていただきました」
三島の顔が一瞬で真っ赤になった。ただの受付だと思っていたのに、社長の秘書だと。
「え? シーナさんって社長秘書だったの?」
「そりゃ、三島部長じゃ勝てないわ」
ざわめきが広がる中、三島は自分の失態を悔やみ、縮こまっている。
「三島部長は、後で報告を受けてくれ」
「はい。しかし、責任者として……」
社長が目で制すと、三島はそれ以上言えず従うしかなかった。ロビーに残された三島には、社員たちの好奇と困惑、そして軽蔑の視線が集まっていた。
シーナは俺に向かって優しく微笑む。
「桐原さん、どうぞ。こちらへ」
「ありがとうございます」
俺はシーナに導かれ、社長、シュミット氏と共に会議室へ向かった。これが、俺の三十七年間の努力が報われる瞬間だった。
会議室に入ると、シュミット氏は改めて契約の詳細を説明し始めた。通訳を介して、契約の規模、今後の展開、相互の利益について丁寧に語っていく。社長は真剣な表情で聞き入り、時折り俺に質問を投げかけてくる。
「桐原君、今回の契約で最も難しかった点は何かね。ここまでの契約内容だと、一度や二度の交渉では到底不可能だっただろう」
「はい。そうですね。一番はやはり、シュミット氏が求める技術と当社の生産能力のバランスを取ることでした。何度も調整を重ね、最終的に双方が納得できる形に落とし込みました。その分、何度も海外へ足を運ぶことになりましたが」
俺はこの大型契約を取るまでに、それまでの海外出張での成果が出せていなかったことも含め、苦労しながら答えた。
「なるほど。営業の基本は足で稼ぐとはよく言ったものだが、君は国内にとどまらず海外にまで足を運んでいたんだね。私も最初の頃はそうだったよ。しかし今の時代にそれができる人材は少ない」
社長は俺がこれまで積み上げてきた努力を言外に汲んでくれた。会議が進むにつれて、その表情には満足の色が浮かんでいく。
会議の終わりに、社長とシュミット氏は俺に向かって言った。
「桐原君、本当にありがとう。君の働きは会社にとって測り知れない価値がある」
「本当に、今回は我々も君の情熱に心を動かされたよ」
「ありがとうございます」
俺はこれまでの努力が認められた気がして、胸の奥が熱くなった。
シュミット氏との会議が終わった後、社長は俺を社長室に呼んだ。そこで社長は改めて俺の報告書を読み直した。社長の表情は真剣そのもので、時折り深く頷きながらページをめくっていく。読み終えた後、静かに口を開いた。
「桐原君、この報告書はいつ提出されたものかね」
「帰国した翌日に、受付のシーナさんを通じてお渡ししました」
社長は口を濁す。
「私は昨日まで確認できていなかった。多忙だったとはいえ、これは私の落ち度だ」
だが社長は言葉を区切った。
「君は三島部長にも報告したのか」
「はい。簡易的な報告書を提出しましたが、部長は内容をしっかりと確認されませんでした」
社長は深いため息をついた。そして今回の契約の件で俺の交渉力を不思議に思ったのか、さらに問いかけてくる。
「ところで君は、これまで海外でどれほどの成果を上げてきたのかね」
俺は謙遜しながらも、過去十年間の主要契約のリストを示した。そう、この時のために入念に整理しておいた資料だ。
社長はそれを見て、驚きの表情を浮かべた。
「これは現時点でも我が社の売上の三十パーセントを占める契約リストじゃないか。これほどの実績がありながら、なぜ営業部で正当な評価を受けてこなかったのかね」
「君の実績としての報告は上がってこなかったが、学歴の問題かと思います。部長からは高卒だという理由で、どれだけ契約を取っても成果を認めていただけませんでした」
俺は営業部で受けてきた不当な扱いについて、感情を挟まず事実だけを伝えた。
「学歴など関係ない。君はこれほど立派に我が社に貢献してくれているではないか。いや、すまなかった。なぜこれまで君の名前として実績が上がってこなかったのか、一度詳しく調べることにする」
社長は首を振りながら詫び、俺の件も含めて営業部の実態を調査することになった。
その日の午後、社長は緊急役員会議を招集した。俺は呼ばれていなかったが、会議の内容は後に聞いた森川が教えてくれた。
「霧原の取ってきた大型契約の件、社長が三島の管理能力を問題視して、重要な報告を見逃したことを厳しく追求したらしい。三島には厳重注意が下され、さらに詳しい調査が行われることになった」
その調査で、三島が過去にも重要な情報を見逃していたことや、部下の契約実績を自分の手柄にしていたこと、さらには営業部内での不適切な発言や態度が複数報告されていたことなどが、次々に明らかになっていく。特に俺や他の社員が取った契約実績の虚偽報告や差別的な発言は、社内のコンプライアンスに反するものとして問題視され、厳重な処分が検討されることになった。
数日後、社長から正式な発表があり、営業部の組織改変が行われた。海外営業部門が新設され、その統括マネージャーに俺が任命されることになった。同時に、三島は営業部長の役職を解かれ、一般の営業職に降格されることが発表された。
あれだけのことをしておきながら、降格だけで済んだのはまだ軽い方なのかもしれない。
社長は全社員の前で俺を登壇させ、これまでの功績を賞賛してくれた。
「桐原君はこれまで地道に海外顧客との信頼関係を築き、会社の海外売上の大半を支えてきた。彼の働きは我が社の財産だ」
「ありがとうございます。光栄です」
ここまで賞賛されたことがなかった俺にとって、それは現実と区別がつかないほどの驚きだった。社員たちは驚きの表情で俺を見つめ、やがて拍手が湧き起こる。
その拍手の中で、三島は蒼白な顔で立ち尽くしていた。彼はこれまで築いてきた地位を一瞬で失い、さらには俺の部下として働くことになったのだ。唇を噛みしめ、拳を握りしめている。なんで俺が、高卒の部下なんかに。
翌日から、俺の新しい職務が始まった。海外営業部門の統括マネージャーとして、専用のオフィスが与えられ、数名の部下がついた。その中には三島も含まれている。
三島は俺のデスクの前に立ち、硬い表情で挨拶をした。
「これからよろしくお願いします」
「こちらこそ、一緒に頑張りましょう」
俺は丁寧に応じたが、三島にはわだかまりが残っている。しばし沈黙が流れた。しかし同じ職場で働く以上、表面上はうまくやっていくしかないのだろう。
三島が降格されてから、俺の中の怒りは少しずつ収まりつつあった。なぜだろうと考えたが、彼が処罰されたことだけでなく、俺自身が正当に評価されたことが大きかったのかもしれない。この先、もっと素直に許せる時が来るのだろうか。
そんなことを考えていた頃、森川が俺のオフィスを訪ねてきた。
「やっと報われたな、霧原」
彼は満面の笑みで俺の昇進を祝福してくれた。
「森川がいてくれたおかげだよ。本当にありがとう」
「何を言ってるんだ。お前の実力が認められただけだ」
「最初から最後まで俺のことを気にかけてくれた。本当にいいやつだ」
その後、俺は妻と娘に昇進のことと、これまで営業部内で起きたことを報告した。
「俺がここまで頑張れたのは、二人が支えてくれたおかげだよ」
「お父さん、本当に良かった」
妻も目を潤ませながら微笑む。
「あなたの努力が報われたのね。本当に嬉しいわ」
それを聞いて、俺は途中で諦めなくて良かったと心の底から嬉しくなった。
職場では、俺に対する社員たちの態度が完全に変わっていった。以前は見下していた若手社員たちも、今では尊敬の眼差しで俺を見るようになった。俺が海外顧客と電話をしていると、興味深そうに耳を傾け、質問をしてくる。俺は彼らに丁寧に答え、自分の経験を共有した。
ある日、三島が俺のオフィスを訪ね、海外顧客との交渉について相談してきた。
「お相手企業の文化を尊重することが大切です。焦らず、信頼関係を築くことを優先してください」
「わかりました。ありがとうございます」
その姿を見て、俺は少しだけ複雑な気持ちになった。三島は確かに傲慢で、俺を散々侮辱してきた。だが、今は立場が逆転し、彼は俺から学ぼうとしている。この変化が本物なのかどうかは、まだ分からない。
数週間が経ち、俺は新しい役職にも慣れてきた頃、海外の顧客たちは俺の昇進を喜び、さらなる協力を申し出てくれた。シュミット氏からも、今後も長く付き合いたいというメールが届き、俺は感謝の気持ちを込めて返信した。社長からも定期報告を求められるようになり、会社の経営層との距離が近くなったことで、若手社員の育成プログラムを提案する機会も増えた。海外営業のノウハウを次の世代に伝え、会社全体の競争力を高めること。それが俺の新しい使命となったのだ。
それから数ヶ月が経過した。俺の統括する海外部門は順調に業績を伸ばし、新たな契約が次々と成立。会社の海外売上は前年比で五十パーセント以上の増加を記録した。社長は俺の働きを高く評価し、役員会議でも賛辞の言葉を述べてくれた。
一方、三島の状況は厳しいものだった。彼は一般営業職として俺の部下になり、頑張ってはいたが、思ったように成果が上がらない。自身が無能な高卒と見下した目の前の男が上司となり、さらには海外顧客との交渉で次々と成果を上げる姿を目にし、自分の無力さを痛感したのだろう。
そしてある日、三島は俺のオフィスを訪ね、深く頭を下げた。
「これまでの非礼を、心からお詫びさせてください」
その声は震え、以前の傲慢な彼とは別人のようだった。
「学歴で人を判断し、あなたの実力を認めようとしなかった。自分の愚かさを恥じています」
「わかりました。これからは一緒に頑張りましょう」
三島は目を潤ませながら答えた。
「ありがとうございます」
オフィスを後にする彼の背中には、本物の反省が滲んでいた。
だが三島の受難はそこで終わらなかった。彼が過去に行った数々の不適切な発言が、社内調査で次々と明るみに出たのだ。複数の社員が証言し、その記録は正式なものとして残された。会社はこれを重く受け止め、三島に懲戒処分を下した。復帰の機会も与えられない。
かつてエリートとして君臨していた男が、一気に地に落ちた。その姿は社員たちにとって衝撃であり、学歴だけでは通用しないという強烈な教訓になった。
数週間後、三島は再び俺のオフィスにやってきた。
「地方の営業所への移動を願い出ました」
「そうか。それも一つの選択だな。どの営業所に行っても、応援しているよ」
三島は深く頭を下げた。
「桐原さん、あなたから学んだことを忘れません」
三島が去った後、俺は静かに窓の外を見つめた。もう彼に対するわだかまりは残っていない。むしろ、彼の再起を心から応援できるようになった自分が誇らしかった。
三十七年間、真面目に働き続けてきた。侮辱され、見下され、理不尽な扱いを受けてきた。だが最後に、学歴ではなく実力と誠実さが正当に評価された。俺にとってこの喜びは、何物にも代えがたいものだった。
それから一年が経った。俺は執行役員として抜擢され、会社の経営に深く関わるようになっていた。海外営業部門はさらに拡大し、新たに北米やアジア地域との取引も開始。若手社員たちは俺の指導のもとで着実に成長し、次々と成果を上げていた。森川も、定年を迎える前に「お前の活躍を見ることができて良かった」と喜んでくれた。
娘のみつは大学院を卒業し、研究職としての就職が決まった。
「お父さんの姿を見て、諦めずに努力することの大切さを学んだよ」
妻も優しく微笑む。
「あなたが幸せそうで、本当に良かったわ」
家族との時間も大切にできるようになり、以前よりずっと充実した日々を過ごしていた。
そしてシーナは、社長秘書としての業務が増え、今では秘書室長として活躍している。ある日、俺が社長室から出ると、シーナが廊下で待っていて深々と頭を下げてお礼を言った。
「あの時、桐原さんが私をかばってくださったこと、今でも覚えています」
「いや、シーナさんこそ、俺を何度も支えてくれた。シーナさんがいなければ、社長に報告書を届けることすらできなかった。本当に感謝しているよ」
「いえ、桐原さんが諦めずに頑張る姿を見て、私も頑張れました。本当にありがとうございました」
俺も同じ気持ちだった。二人は笑顔で握手を交わす。
「こちらこそありがとう。今後も頼りにしているよ」
「はい。これからも桐原さんをサポートさせてください」
「こちらこそよろしくお願いします」
別の日、俺は若手社員たちを集めて、自分の経験を語る機会を設けた。
「大切なのは誠実さと努力だ。困難に直面しても諦めずに前を向くこと。そして人を思いやる心を忘れないこと」
若手社員の一人が手を挙げた。
「桐原さん、高卒というレッテルを感じたことはありませんでしたか」
「もちろんあったよ。何度も。でもな、学歴は入り口を決めるかもしれない。でも出口を決めるのは、自分の生き方だ」
若手社員たちは真剣な表情で頷いた。
「誰かに認められるために働くんじゃない。自分が誇れる仕事をするために働くんだ」
その言葉は、彼らにしっかりと届いたようだった。
五十五歳で迎えた大きな転機。遅すぎると思うかもしれない。だが人生に、無駄な時間なんてなかった。全てがこの日のためにあったのだ。
俺はこれからも誠実に、真面目に、そして人を思いやる心を忘れずに生きていく。それが俺が選んだ道だから。
