電話をかけたのは、夫の弘樹がもう長くないと知った、その日のことだった。私は義母に、時間を作ってほしいと伝えた。すると、最初の言葉が飛んでくる。
「はあ。いきなり何よ。そんな急に言われて、はい、どうぞなんてならないでしょ。こっちはあんたたちと違って、貧乏暇なしで仕事をしてるんだからね」
定年を迎えたはずではなかったかと私が尋ねると、義母は年金だけでは不安だから働いているのだと言い放った。必要なら支援を申し出た私に、義母は鼻で笑う。
「馬鹿にしないで。私たちのことを見下してるの?」
私はただ、少しでも力になりたいと思っただけだと言った。だが義母は、金を手にした人間が偉そうにするなと吐き捨てる。私は話を本題に戻した。
「お母さん、弘樹と仲直りをしてください。お母さんと弘樹の間に色々あったのは知っています。でも、今はそんなことを言っている場合じゃないんです」
私は弘樹が病院で診察を受けたこと、そして食道癌だと診断されたことを告げた。医者はかなり進行していると言った。放射線治療などで進行を遅らせることはできても、もう完治は難しい。つまり、長くはないということだった。
「お母さん、お願いです。これからはわだかまりをなくして、夫と親子として、昔のように触れ合ってください。夫に一つでも心残りを持ってほしくないんです」
義母は「ちょっと考えとくわ」と言った。私は時間がないのだと食い下がる。すると義母は声を荒げた。
「うるさい。あんたは出しゃばってくるな。これは家族の問題よ。私があいつにどれだけ裏切られたと思ってるの? そのことを今更なかったことになんてできないのよ」
「どうしてそこまで?」
「あんたにどうこう言われる筋合いじゃないわ」
「弘樹はもう長くないと言ってるでしょ」
「だから何よ。どうするかはこっちが決めるわ。病気を盾に攻めてこないでよ。こっちの気持ちを踏みにがしにしないで」
私は懸命な判断をしてくれると思っていると言うしかなかった。
その十分後、今度は義父に会いに行った。久しぶりの再会だった。
「お父さん、弘樹が食道癌になりました。そして、あまり長くないと言われています。お二人に弘樹のお見舞いに来てもらいたいんです。色々あったのは分かりますが、お願いできますか?」
義父は静かに言った。
「私は個人的には弘樹に何も怒りはないんだよ。喧嘩しているのはお母さんと弘樹だったんだ。私はできるだけ間に入るようにしていた。そんな時に弘樹は君と結婚をしてね。それで私が弘樹の味方をしてしまうと、お母さんを一人ぼっちにしてしまう。それは避けないといけないと思ってたんだ」
つまり、義父は義母を一人にしないために、ずっと距離を取っていたのだという。私はこれまでの気遣いに礼を言い、これからは義母を説得する方向で動いてほしいと頼んだ。義父は分かったと、なんとかやってみると言った。
私はマンションのカードキーを送り、オートロックの暗証番号も伝えた。いつでも家に入れるように、という意味だった。
一週間後、弘樹の友人だという男が私を訪ねてきた。木島明彦と名乗り、学生時代からの付き合いだと話した。
「突然すみません。弘樹から連絡先を教えてもらいました。病気についても聞かされましたよ」
「そうでしたか」
「まさかあいつがこんなことになるなんて。本当に神様なんていないってのが分かりました。誰よりも仕事を頑張って、誰に対しても優しく接していた夫に、こんな仕打ちをするなんて」
そうですね、と私がうつむくと、木島さんは話を続けた。
「実は弘樹から、これからのことについて色々と相談を受けたんです。俺は司法書士をしていますので、権利関係のことを任せたいと言ってくれたんです。まあ、昔からの付き合いだから信頼してると言ってくれてね」
「そうだったんですか」
「それで奥様とも色々と話し合いをしたいので、お時間を作ってもらうことは可能ですか? LINEでのやり取りは可能でしょうか?」
できれば、時間がある限り今は弘樹と一緒にいたい、と私は答えた。木島さんはもちろんですと言い、LINEでやり取りをすることにした。友人の頼みだから、喜んでやらせてもらうと、彼は笑った。
一年後、弘樹は天に旅立った。私はその知らせを義母に伝えた。
「あら、そう。随分と長かったわね。私が聞いた時は半年くらいって聞いてたんだけど」
弘樹は抗がん剤治療などで頑張って、生きようと戦ってくれていたのだと言うと、義母は口元を歪めた。
「あらあら。そんな余計なことはしてほしくなかったわね。みっともないことはしてほしくなかったの。天命だと思って、素直に受け入れるべきだったと思うわ」
「ふざけないでください。よくもそんなことが言えますね」
「私たちからしたら、あいつはそれくらい憎らしい存在ってことよ」
「信じられない。あんたは何も知らないでしょ」
「知ってますよ。弘樹が大学受験に失敗したことを、今も根に持ってるんでしょ。でも、それから弘樹は仕事を頑張って、さらに独立して事業を成功させてるんですよ。それなのに、どうしてそんなに憎んでるんですか?」
義母は受験の失敗も悔しかったと言う。私と夫は浪人してもう一度受験をしなさいと言ったのに、あいつは就職すると言い張ったのだと。だが弘樹は高校時代からプログラミングが得意で、その分野で活躍できると思っていた。実際、そうなった。
「そんなのは全部結果論。私の思う通りにならない奴を、私は家族だなんて認めないから」
「何ですか、その偏った考え方は」
「とにかく、あいつに対する愛情なんて一つもないから」
「じゃあ、もういいです。これから私たちに関わらないでください。一度もお見舞いにも来ない人を、私は家族だなんて認めませんから」
「はあ、そりゃどうも。葬儀は明日なの?」
「そうですけど、あなたたちに出席する資格はないですよ。来てくれるのは弘樹のことを知っている方たちだけです。彼らと一緒に弘樹を見送りたいと思います」
「はあ。そうやっていい妻を演じるわけだ」
「何を言ってるんですか?」
「だから、そうやって周りからの同情を買おうとしてるんでしょ? 葬儀で遺影に涙を流しても、誰も同情しないわよ。あんたの心の内なんて、みんな知ってるんだから。遺産でしょ。そもそも、あのバカに近づいたのだって金欲しさでしょ。思ったよりも早く金が手に入ってラッキー、みたいなこと」
「バカなのはそっちですよ。私がそんなことを考えてるわけがないでしょ」
「悪いけど、息子の遺産は私と夫のもの。あんたには一円もやらないから」
「何を言ってるんですか?」
「というか、施しは受けない的なことを言ってたでしょ。死んだのなら、もらってやってもいいわ。今まで世話をかけた迷惑料とか、慰謝料代わりにね。なんかあの子って高い時計をコレクションしてたんでしょ? ちょうど私もいい時計が欲しいと思ってたから、とりあえずそれだけ送っといてくれない? どんなのがあるかチェックしておきたいのよ」
「ふざけないで。そんなことが許されるわけないでしょ」
「うるさい。とにかく全額遺産は私たちがもらう。他人のあんたは、さっさとどっかに行ってちょうだい」
私はそれでも、誰がそれを許すものかと食い下がった。義母は勝ち誇った顔で電話を切った。
二週間後、義母から電話がくる。
「ねえ、いい加減、遺産について話をしましょうよ。まあ、全部私たちのものにしちゃうんだけどね」
「バカなことを言わないでください。あなたたちは弘樹のために何をしましたか? お見舞いにすら来なかった人たちが、遺産を全部もらえるわけがないでしょう」
「どうやらそのようね。なんだか配分みたいなのが決まってるって言われたわ。仕方ないけど、それを受け入れてあげる。半分は私たち夫婦のものになるってことだから、さっさと金をよこしなさいよ。こっちは色々と買うものとか決めてるんだからさ」
「何を言ってるんですか?」
「何がよ」
「全額、私の受け取りになってますが」
「え?」
「遺産は全て私のものになってるんです。夫がそういう遺言を残していたのでね。ですので、あなたたちには一円たりとも渡しませんよ」
「そんなわけないでしょ。さっきも言った通り、相続っていうのは親族間で分けるようにルールで決められてるの」
「弘樹が亡くなった時、あなたは弘樹を家族だと認めてないっておっしゃいましたよね。つまり、家族ではないということです。ですので、遺産を受け取る資格はあなたにはありません。それは理解してください」
「ふざけるな。そんな横暴が許されると思ってるの?」
「横暴? どの口が言ってるのよ。今まで散々弘樹のことを踏みにしにしておいて、遺産だけは受け取ろうなんて。横暴以外の何者でもないわ。そんなことを私は絶対に許さない。弘樹の資産は弘樹が命がけで手に入れたものです。私には妻として、それを守る使命があります。絶対にあなたたちに渡したりしませんからね」
「本気で独り占めするつもりなのね」
「そういうことになります」
「残念ね。あんたがこんな人間だと思わなかった」
「どういうことですか?」
「弘樹のことを思いやっているふりをして、結局あんたもお金が欲しいだけだったのね」
「変な言いがかりはやめてください」
「言いがかりじゃないわ、この外道め。まあ、そんなあんたを見抜けなかった弘樹にも問題はあると思うけどね」
「さっきから何を言ってるのか分かりません」
「こっちには遺言書があるのよ。そこには弘樹が全財産を私たちに譲ると書いてあるわ」
「遺言書? そんなわけないでしょ。どうしてあなたがそんなものを持ってるんですか?」
「弘樹が私に渡してくれたのよ。あなたはお見舞いにも来なかったでしょ?」
「いえ、一度だけ行ったの。その時に渡されたんだから」
「嘘ばっかり」
「これが弘樹の本音よ。あんたみたいなもんに金を渡すのが嫌だったのよ。もしあんたに弘樹のことを思いやる気持ちがあるのなら、弘樹の遺言書通りに全財産を私たちによこしなさい。それがあんたのできる唯一の務めよ」
私は分かりましたと言って、電話を切った。時間稼ぎをしていると思われても、仕方がなかった。三日後、木島さんから義母に連絡がいった。
「突然の連絡失礼します。私は弘樹の友人の木島明彦です」
「弘樹の友人? どうしてそんな人がいきなり連絡をしてくるの? というか、どうしてこの連絡先を知ってるのよ」
「これはマリさんからお聞きしました」
「はあ。なんでそんな勝手なことを」
「弘樹の遺言書の件について、お話がありまして」
「あんたには関係ないことよ。単なる友人という関係だけなのに、口を出さないでもらえる?」
「友人として、弘樹からお願いをされてたことがありまして」
「何よそれ」
「あの世に行く前に、色々と権利関係をちゃんと対応しておいてくれと言われたんです」
「権利関係って何よ?」
「要は相続に関することです。私は司法書士をしていますので、その辺は専門なんですよ。で、弘樹は生前に遺言書を残していました」
「はあ、もちろんあなたが持っているものではないです。そこには、遺産の全ては妻であるマリに相続させると書いてあります」
「そんなの捏造だわ。あの女が一人で守るために無理やり作ったのよ」
「いえ、これは弘樹が書いたものです」
「あんたもあの女とグルでしょ。そうやって弘樹の意思を踏みにじろうと」
「踏みにじってるのはそっちですよ。この遺言書はしっかりと手続きをして、公正証書として登記をしてあります。つまり、こちらの遺言書が本物ということです。その手続きには弘樹も関わっていますから、俺たちが勝手にやったということはありません」
「嘘よ」
「本当ですよ。弘樹は残り少ない貴重な時間を、マリさんたちが困らないようにするために費やしたんです。きっとあなたたちが変なことをしてくると分かってたんでしょうね。本当にあいつには頭が上がらないですよ。俺が同じ立場なら、そこまで考えが至るかどうか。だからこそ、俺は友人としてあいつの意思を守りますから。あなたたちがおかしなことを仕掛けてくるのなら、その全てと戦う意思があります。あいつからは、マリを守ってくれとお願いもされています。だから俺は、どんな手を使ってもマリを守ります」
「じゃあ、もうこの遺言書は向こうってこと?」
「当たり前でしょう。これ以上、弘樹の思いを汚すようなことはやめてください」
翌日、私は義母に電話をした。
「お母さん、木島さんから話は聞きましたか?」
「聞いたわよ。それじゃあ、遺産は受け取れないって理解しました」
「分かったって言ってるでしょ」
「実を言うと、全額を私がもらうっていうのは、制度的にダメなんですよ」
「どういうこと?」
「遺留分っていうのがあって、どれだけ弘樹が私に全てを渡したいと思っていても、ある程度は相続する権利のある人に渡さないといけないって決められてるんです」
「え、じゃあ私たちももらえるってこと?」
「そうですね。本来なら」
「じゃあ、さっさとよこしなさいよ」
「でも、お母さんたちはその権利を手放したんです」
「何を言ってるの? 手放すわけないでしょ」
「いいえ、手放しましたよ。だって、遺言書の捏造なんてことをしたんですから」
「あれが何なの? 遺言書の捏造なんて許されるようなことじゃないですよ。お母さんのやったことは、私文書偽造罪と言って、立派な犯罪なんですから」
「犯罪ですって」
「これに関しては、警察に被害届けも出します」
「ちょっと待ってよ」
「それだけじゃないです。そのようなことをした人間は、相続人としての資格を剥奪されるんです。つまり、お母さんたちは遺留分すら受け取れなくなったということです」
「嘘よ」
「事実です。そんなに気になるのなら、弁護士にでも聞いてみたらどうですか? 呆れ顔で説明をしてくれると思いますよ」
「一円ももらえないなんて」
「私たちとしては悲願達成です。弘樹は一円とも、あなたたちには渡したくないって言ってましたからね」
「なんで、あいつにそんなことを言われないといけないのよ」
「学歴程度のことで見捨てたんだから、言われて当然よ。弘樹は学歴以外のところであなたたちに認められようと頑張ってきたの。なのにあなたたちは、そんな弘樹の頑張りを見ようとさえしなかった。そして、余命が近いと分かっていても、最期にすらあなたたちは来なかった。そんな人間に弘樹は愛情を使い果たしてたのよ。だから、こうしてあんたたちに弘樹が残したものを一つも渡さなくて良くなって、本当に嬉しいわ」
「ふざけないでよ」
「こっちは大真面目よ。ふざけたことをずっと言ってるのはそっち。それじゃあ、警察が来ると思うから、その時は素直に従ってくださいね」
三日後、義父が私の家に現れた。木島さんから連絡をもらっていたのだ。
「マリさん、色々とうちの者が迷惑をかけて申し訳なかった」
「これに関してはもう刑事事件になっていますので、謝罪されても困るんですけどね」
「だとしても謝らせてほしい。本当にあいつはとんでもないことをしてしまって」
「お父さんは、何も知らなかったんですか?」
「知らなかったんだ。一緒にいて気づけなかったのは申し訳ないと思っている」
「お母さんからも、あなたが共犯だという証言はないみたいですね」
「知ってたら止めていたよ」
「まあ、それはもういいです。私がお話したいのは別の件ですよ」
「どうかしたのか」
「お父さん、弘樹の時計を盗んだでしょう」
「はあ。何を言っているんだ?」
「知らばっくれても意味ないですよ。弘樹がコレクションしていた時計の一部がなくなっていました。盗んだのはあなたです」
「バカを言うな。言いがかりだよ」
「お父さん、カードキーを使って入られましたよね。まあ、それ以外に入る方法はないので当然ですけど」
「そんなのは私は知らん」
「カードキーを使ったら履歴が残るのをご存知ですか? いつ誰が入ったかを、管理会社が把握できるようになってるんですよ」
「嘘だ」
「残念です。これは事実です」
「ちょっと待ってくれ。警察は勘弁してくれよ。時計はすぐに返すからさ。許してほしい」
「あなたは最低ですよ。個人のものを盗み出すなんて」
「しょうがないだろう。こっちは遺産が入ると思って、色々と先に買い物をしてしまったんだ。その支払いができなくなってしまったら」
「だから盗みを働いたと。しかも、自分の息子の時計を盗んだんですか?」
「背に腹は変えられないだろう」
「とんでもない開き直り方ですね。このことはすぐに警察に通報しますからね」
「待ってくれよ。そんなことはしないでくれ。家族なんだから、別に問題ないだろう。親族間での窃盗は罪にならないって言うし」
「その時計は夫のものですよ。しかし、相続をして全て私のものになってるんです。だから盗罪は成立しますよ。私はあなたとは、親子でも何でもないんですから」
「そんな。頼むよ。見逃してくれ。弘樹だって、俺が逮捕されるのは嫌なはずだ」
「俺は弘樹とは喧嘩をしているわけじゃないし。確かにお母さんとは喧嘩してましたが、あなたとはそういうことがあったとは聞いてませんだろ」
「だとしても、あなたは一度も弘樹のために動いたことはなかった。一度でも弘樹の味方をしたことはありましたか?」
「いや、だから、それは説明しただろう」
「だったら、どうしてお母さんを説得してくれなかったんですか? お見舞いに来るように言ってくれと、私はお願いをしたはずですよ」
「いや、聞いてくれなくてさ」
「じゃあ、どうして来なかったんですか? 説得はできなくても、夫婦の代表としてあなたが来てくれても良かったはずですよ」
義父は黙り込んだ。私は言葉を続けた。
「あなたもお母さんと同じくらい弘樹に無関心だったんですよ。争い事も起こさないくらい、弘樹のことをどうでもいいと思ってたんです。だから病気をしても入院しても、一度もお見舞いに来ようとしなかった。あなたは弘樹のことを何とも思ってなかったんですよ」
「違う。そんなことはない。俺は心から弘樹のことを愛してたんだ」
「口でどれだけ言っても意味ないです。あなたが弘樹のためにやった行動こそが、あなたの弘樹に対する気持ちを表してますよ」
「いや、本当に違うんだ」
「まあ、もうどうでもいいです。お父さんが奥さん思いだというのは、よくわかりましたから」
「どういうことだ?」
「だって、お母さんを一人ぼっちにさせないために、自分も同じ人物になろうとしたんでしょ? 素敵な夫愛ですね」
その後、義父母は二人とも警察のお世話になった。義母は遺言書の捏造をしたことで処分を受け、義父も被害が大きかったことでしっかりと制裁を受けることになった。結果的に二人とも刑務所行きは免れたが、私への不当利益を返還しないといけなかったり、ローンなどの支払いをしないといけなかったりで、生活はどんどん追い込まれていった。
親戚たちにお金を借りようと駆けずり回ったようだが、犯罪に手を染めたことを皆が知っていたため、すぐに追い払われてしまったらしい。結局、二人は消費者金融からお金を借りて返済をすることになった。当然、今度は借金に捕まり、二人揃って夜逃げに乗せられて、今は船の上で肉体労働をさせられているという話だった。
一方の私は、今は一人で生活をしている。二人で住んでいたマンションは広すぎたので、単身者用のマンションに住み始めた。
弘樹の遺産は、自分一人では使いきれないので、基金を立ち上げた。弘樹と同じように周りからのサポートが得られないような人が、それでも夢を叶えられるように手助けする、それが目的の基金だ。弘樹からは自由に使っていいと言われていたけれど、きっとこの使い方は喜んでくれるだろうと思っている。
