翔平と離婚するんですって。私の勝ちね。何に勝ったんですか? 私お母さんと勝負した覚えはないのですが、私の長年の訴えをようやく聞いてくれたんだもの。私の大優勝だわね。前から離婚しなさいって言ってましたもんね。本当よ。この日をどれだけ待ち詫びたことか。夫婦としての関係はとっくに破綻してたんだから、もっと早く離婚したら良かったのに。
すみません。こちらも色々と準備があって。どうせ財産分与のためのものでしょ。まあ、そういうことにしておいてください。そんなわけで準備が整ったので本日届けを出しました。
で、今は何してるの? まさかもう出てった? いえいえ、子供たちと買い物ですよ。色々と荷物をまとめなきゃなので、まだ少しだけ家にいさせてもらいますね。はい。はい。いいわよ。やっと大嫌いな嫁が出ていく。これからは1人寂しく暮らしてね。
ご心配なく。子供たちは私が引き取ります。何言ってるの?

孫たちはうちに残るのよ。あんたは1人ぼっち。どうして子供たちを置いていかなきゃいけないんですか? 当たり前でしょ。翔平を育てあげたという立派な実績があるんだから、私の方が母親として優秀なのよ。そうですね。とてもご立派だと思います。だからあんた1人で出ていきなさい。あくまで子供たちの意思が大事なので、聞いてみてはどうでしょう? いいわよ。本音を聞いてもがっかりしないでね。ああ、そうそう。今日は魚でお願いね。安くなかったので今日はジオロースです。5分後。太君ばよ。何俺? 今母さんと買い物中なんだけど。まあ、連れ回されてるの?
遊びたいだろうに。かわいそうね。俺が行きたくて言ってるんだよ。母さん1人でゆう太とレー太の相手しながら買い物するの大変だろうと思って、お手伝いしてるんだ。弟の面倒を見れるなんて、なんて立派なお兄ちゃん。私の教育のたまものね。
照れちゃって。中学生らしい反抗だこと。照れてもないけど。てか、何のようなの? まあ、母さんから聞いてるけど。あなたたちのお母さんは母親失格なの。だからお母さんだけ家を出ていくのよ。何言ってんの? 父さんとバーバ以外みんな出てくよ。え? 俺もゆう太もれ太も母さんについてくから。そんな冗談やめて。バーバの心臓に悪いわ。本気だよ。男の子たちに出て行かれるのは困るわ。後継がいなくなってうちの血筋が途えちゃう。母さんの苗字になるから俺らには関係ないよ。でもうちの血が流れてるのよ。だから何?
それは母さんの方にも言えることじゃん。いいからバーバとお父さんの方に来なさい。
ゆう太とレー太が喧嘩しちゃったからまたね。5分後。ちょっとシ太ちゃんが家を出るって言ってたけど、あんたがその気にさせたんでしょ? シ太はもう中学1年生です。ちゃんと自分の意見を言えますよ。洗脳したのね。ああ、なんて恐ろしい。母親たるもの。子供の考えを奪っちゃだめでしょ。じゃあ自分の息子はどうなのですか? お母さんに言われるがまま離婚して。それこそ翔平さんの気持ちを無視していますよね。あの子は自分の意思で離婚したのよ。そうなるように言い続けたんでしょ。結婚前の翔平さんはそうじゃなかったです。何言ってるの? 翔平のこと何も分かってないわね。あれが本当の翔平よ。あんな自分じゃ何も決められない大人が、実家で暮らしてるから私に甘えてるのよ。1人暮らししていた頃は自分の考えを持ってたのに。お母さんに育てられた翔平さんが少しかわいそうですね。嫉妬してるんでしょ?
あんたじゃなくて私に甘えてくるから。その年で小離れしないのは異常ですよ。もうお会計しなきゃなので失礼しますね。
1週間後。あ、本当にみんなで出ていく なんて愚かなことしたわね。後悔しても知らないわよ。今まで大変お世話になりました。どうせ引っ越し先はボロアパートの狭い部屋でしょ。シングルマザーの定番よね。かわいそう。4人で過ごすには十分の広さがある部屋なので大丈夫です。強がっちゃって。未来の後との孫たちが本当に不自由してないか? 私がチェックしてあげる。5分後。し太君大丈夫? 何が? うちに帰りたくなったらいつでも言うのよ。バーバがすぐに迎えに行くからね。いや、全然困ってないし。むしろ前より超快適だから。何強がっちゃってるの?
アパートなんて気を使うことばかりでしょ。誰がアパートに住んでるって言ったの? 違うの? ならマンションどこに住んでるか教えて。なんでバーバに引っ越し先教えなきゃいけないの? あなたたちの祖母なんだから知る権利はあるわ。バーバには教えたくない。俺もゆう太もレー太も引っ越してから喧嘩が減ったんだ。もうバーバのいるところには戻らないよ。あら、バーバに向かってそんなこと言うの?
反抗期でも言っていいことと悪いことがあるでしょ。反抗期とか関係なく普通に嫌なんだ。もうしてこないでくれる。
翌日。ちょっと翔平。何? 今残業で忙しいんだけど。あなたはこれでいいの? 子供たちはみんなあの女のところに行ったわよ。別に良くね? それの何が問題なの?
後継がなくなるでしょうが。そこまでして後継ぎるかね? 何言ってるのよ。後継もだけど、嫁と子供全員に出て行かれたなんて知られたら親戚中から笑いものにされるわよ。そう言われてもなあ。うちは本家でもなければ大した家系でもないじゃん。あのね、私がいなくなったら誰がお墓の面倒を見てくれるの? 演技でもないこと言うなよ。いずれはあなたも同じお墓に入るのよ。無縁仏にする気。お墓の面倒のために家族の面倒見ろってこと? やりたくねえ。あの子たちの面倒なら新しい嫁を用意すればいいじゃない。新しい女は確かにいいかも。そうでしょ。あんな嫁よりもっといいの見つけなさいよ。でもさ、なんでそこまでして一緒にいたいんだよ。特にショ太なんて口ばっかり達者で可愛げないじゃん。あの子にあふさわしい賢さだからよ。だったらシ太だけ引き取れば将来結婚するとも限らないでしょ。保険としてゆう太君とレー太君にもいてもらわなきゃ。うちを反映させるために。俺の給料と母さんの年金だけでガキ3人養えるかよ。ただでさえアカが稼いだ分が減って苦しいのに。それについては何の問題もないわ。むしろ孫たちがいることでお金が増えるの。給付金がどう増やすっつうんだよ。あなた、児童手当の存在を知らないの?
なんかそんなのあったよな。役所関係は全部アカがやってたからな。3歳以上は1人当たり月1万円。3人目は年齢関係なく一律3万円。合計1ヶ月で5万円ももらえるのよ。あいつらいるだけでそんなに金もらえるのなら、俺も取るわ。そうしなさい。
1週間後。よ。新生活はどうだ? 男は黙ってください。シ太と優太が得意な教科は? 何で俺がそんなこと知らなきゃいけないんだよ。あなた、自分の子供のことも知らないの? だって、今まで全部アカに任せっきりだったからな。これからはちゃんと関わろうと思ってるんだ。今更?
もう遅いわよ。子供たちはもうあなたのことなんて必要としてないもの。あの日、孫たちに会いに行ったら、あいつら、私の顔を見るなり家の中に入れてくれなかったんだ。バーバは来ないでって言われてな。あいつら、本当にあんたのことが嫌いなんだな。そんなことない。あの子たちはただ単に反抗しているだけよ。もう少しちゃんと叱れば言うことを聞くわ。あの子たちはもう子どもじゃない。自分の考えがちゃんとあるんだよ。あなたに何が分かるのよ。あなたは娘を追い出してまで何を手に入れたかったの? 私は自分の孫たちの幸せを願っていただけよ。あの女のところに行って、本当に幸せになれると思ってるの? あの子たちのことなら心配してないわ。アカは立派な母親よ。あんたと違ってな。何ですって? あんたの方こそ、いつも自分のことばかりで。翔平の気持ちも考えずに離婚させて。俺は母さんに言われたから離婚しただけで、本当はまだアカのことが好きなんだよ。え?
あんた、何て言ったの? 俺は最初から離婚するつもりなんてなかった。母さんがしつこく離婚しろって言うから、断れなくて。何て愚かなことをしてしまったんだろう。じゃあ、どうして離婚したのよ? 母さんに言われたからだよ。自分の気持ちも伝えられないまま、ずるずると。あんた、馬鹿なの? 本当はあの女とよりを戻したいんだろうけど、もう遅いわよ。あの女には新しい男ができたかもしれないし。そんなことはない。アカは俺のことをまだ好きだと思う。どうしてそんなことが言い切れるのよ?
自分の妻のことを信じてるからだよ。母さんには分からないかもしれないけど、俺はアカと子供たちを取り戻したいんだ。あんた、本気で言ってるの? ああ、本気だ。もう二度と母さんの言いなりにはならない。何よ、その態度は。俺はいつも母さんの言うことを聞いてきた。でも、もうそれじゃダメなんだ。自分の人生は自分で決める。これは、俺の決意だ。
あんた、バカなこと言わないでよ。私はあんたのためを思って言ってるのよ。あの女のどこがいいのよ。俺にはアカがいいんだ。もう母さんには干渉しないでほしい。何を言い出すのよ、いきなり。ずっと思ってたんだ。母さんはずっと俺のことを自分の思い通りにしようとしてる。でも、もうそれには従わない。俺は俺の道を行く。あんた、そんなことを言うと後悔するわよ。後悔をしたのは、最初から母さんの言うことを聞いて離婚したことだ。もう、あの女のことは忘れなさいよ。忘れられないんだ。それに、子供たちも俺のことを必要としてる。シ太にもう一回会ってくる。無理よ。あの子たちはもうあなたのことを拒絶してるんだから。それでもいいんだ。たとえ嫌われても、俺は自分の気持ちを伝える義務があるんだ。こんな馬鹿げたこと、やめなさいよ。母さんには関係ない。俺の問題だ。
どうやら本当に本気みたいだな。ああ、本気だ。もう何にも邪魔されない。アカに会いに行く。もし、あの女が新しい男と付き合ってたらどうするの? その時はその時だ。俺は自分の気持ちを伝えるだけでいい。それで、もしダメだったら、すっぱり諦めるさ。それでいいのか? これで、やっと自分自身を許せそうだ。母さん、今までありがとう。でも、もうあなたの人生を壊し続けるのは止めにするよ。それはこっちのセリフよ。まさかあんたがこんなことを言い出すなんて思わなかったわ。ごめん。でも、俺は俺の選んだ道を行く。
1週間後。アカ。翔平。どうしてここに?
話があるんだ。今はちょっと忙しいの。すぐ終わる。お願いだ。何の用? 今さら、何よ。俺とやり直してくれないか? 何言ってるの? 私たちはもう離婚したでしょ。あれは取り消す。何言ってるのよ。もう遅いわ。私の気持ちは変わらない。本気で言ってるんだ。まだ俺のことを愛してるだろ?
何を根拠にそんなこと言うの? 直感だ。あの日もお前が俺のことを見る目が忘れられなかった。そんなの昔の話よ。今はもう違う。俺はお前が必要なんだ。子供たちにも会いたい。子供たちは、あなたのことを嫌ってるわ。それでもいいんだ。もし嫌いなら、嫌いでいい。でも、会って話をするだけでもいいから。
アカ、お願いだ。折れてくれないか? 無理よ。今さら、私たちに何を求めてるの? やり直したいんだ。それを聞いて、何になるの?
一緒に暮らしていた日々を取り戻したいんだ。本当にやり直せると思ってるの? あの頃のこと、何も変えられないんだよ。やり直せるさ。俺は変わると約束する。今すぐってわけにはいかないけど、ちゃんと変わる。どうして、今になってそんなことを言うの? ずっと言えなかったんだ。言いたくても言えなかった。母さんから離れることができなかった。それは言い訳でしょ。好きでもないと何年も言い続けてきて、今さら。お前を傷つけてばかりでごめん。本当に謝る。もう一度、やり直してほしい。あの時みたいに、家族みんなで暮らしたいんだ。それは無理よ。もう戻れない。何を言っても無駄なの? そうね。もう、昔のことは思い出さないで。
分かった。それなら、子供たちにだけでも会わせてくれないか?
それもダメなの? 自分でもわかってるんだ。自分がひどいことをしたって。だから、せめて謝らせてほしいんだ。娘たちは会いたがらないと思うけど。それでもいい。会えるだけでいいんだ。どうしても、そうしたい? ああ。分かった。好きにすれば。
部屋の中。し太、レー太。元気だったか? お父さん、何しに来たの?
ちょっと、お前たちと話がしたくて。何の話? ちゃんと謝りたくて。お父さんは間違ってた。お前たちを悲しませて、いじめられたことを謝りたいんだ。今さら謝っても遅いよ。お前に言われても、全然嬉しくないし。そうだな。お前たちの言う通りだ。お父さんは最低なやつだよ。お前たちを裏切ったし、お母さんにも辛い思いをさせた。本当にごめん。もうすぐに帰ってよ。な、待ってくれ。まだ言いたいことがあるんだ。本当にごめん。許してほしいとか、そんなことは言わない。ただ…本当にすまなかったと思ってる。
続ける。それはバトルだよ。わかってる。分かってない。自分が何をしたのか、分かってるの? お前たちを悲しませてしまったことは分かってる。でも、どうすればいいのか分からなかったんだ。どうすればいいか分からないのは、お前も同じだろ。お前は母さんに何でもお任せで。自分で考えるってことをしなかったんだろ。なぜババの言うことを聞いて離婚したんだよ。確かに、自分の弱さだったと思う。怖かったんだ。反対されるのが。お前は、自分が本当にやりたいことをやらなかった。ババに反対されたらどうしよう、そう思ったんだ。お父さんは、お父さんの人生を生きてきたか? 正直、そう思う。そうだよな。あの時から、お前はずっとババの人生を歩いてきたんだ。いい加減、気づけよ。俺たちを悲しませたのも、お前のせいなんだぞ。
タマには深く謝れよ。ああ。本当にすまなかった。もう帰ってくれ。ああ。最後に一つだけ。母さんとよりを戻そうと思ってる。母さんは、反対するかな?
どうだろうな。でも、こればかりは自分で決めることだと思う。ありがとな。そういうことなら、俺はもう大丈夫だ。今まで、本当にありがとう。母さんを泣かせたら、許さないからな。お前たちが味方してくれてるだけで、お父さんは嬉しいよ。お父さんは、お前たちのような子を持って、本当に幸せだ。じゃあな。うん、ばいばい。
2週間後。母さん。ごめん。何よ、今さら。謝っても遅いんだよ。分かってる。それでも謝りたくて。俺はもう、母さんの言うとおりにはならない。そういう風に育ったんだ。今日からは、自分の人生を歩いていく。あんたは、私の人生をめちゃめちゃにしただけだ。謝っても許されると思うなよ。許してほしいとは言わない。でも、息子の幸せを思ってくれなかったことに、感謝してるら?どういう意味だよ。めちゃくちゃにしたおかげで、自分が何をすべきかようやく分かったんだ。母さんには、もう二度と会いに行かない。あんたのことは、もう知らないよ。そんなことを言っていいのか?お前は、私を親だと思ってないのか?思ったことなんて一度もない。俺が本当に尊敬していたのは、妻のアカだ。子供たちのために、必死で頑張ってきた人だ。それに一番忠実に誓う。
また、甘えたことを言って。さよなら、母さん。二度と、あんたの名前を呼ばないでくれ。もう、何も言わない。あばよ。
それから、何年かして、翔平はアカと会って、正直に訴えた。アカ、改めて言う。俺はお前と子供たちを取り戻すために、生まれ変わった。その言葉を聞いて、アカは微笑んだ。馬鹿ね。あなたは、前からそう言えばよかったのよ。あの日の夜、2人と子供たちは、家族としての新しい一歩を踏み出した。