突然の電話は、義母からでした。「慰謝料、あんたが払いなさいよ。300万」え?私が?浮気したのは私じゃないのに。冷たい声で聞き返すと、義母は「はるかが泣いてた。あんたに裏切られたって」と怒鳴る。でも、本当に裏切ったのは、はるかの方。私は静かに証拠の写真を送った。すると電話の向こうが、急に静まり返った。「まさか……あの子が」震える声。私は黙って電話を切った。でも、これで終わりじゃなかった。数日後…

突然の電話は、義母からでした。「慰謝料、あんたが払いなさいよ。300万」え?私が?浮気したのは私じゃないのに。冷たい声で聞き返すと、義母は「はるかが泣いてた。あんたに裏切られたって」と怒鳴る。でも、本当に裏切ったのは、はるかの方。私は静かに証拠の写真を送った。すると電話の向こうが、急に静まり返った。「まさか……あの子が」震える声。私は黙って電話を切った。でも、これで終わりじゃなかった。数日後...

嫁の美奈子が突然、義母から電話に出た。直入に言うわよ。離婚の慰謝料、息子だけじゃなくて私にも払いなさい。お母さん。あ、違ったわね。元お母さんでした。

美奈子は電話越しに冷たい声で返した。一体どういう理屈でしょうか。

あんたの浮気が原因で離婚したんでしょ?

はい。私は浮気なんてしてませんけど。

嘘をつくな。息子を傷つけられて、私も深く傷ついたのよ。その賠償金を払うのは当然でしょ。

ずっと何をおっしゃっているのか分かりませんが。

とぼけないで。私、全部聞いてるのよ。はるかが裏切られたって泣いてたわ。

嘘泣きです。騙されないでください。

ティッシュを1箱も無駄にしたのよ。濡れてないはずです。もったいない。

ばっくれる気なら、ちゃんと証拠だってあるって言ってるのよ。慰謝料300万は取れるって。

だからといって、お母さんが請求するんですか?

当たり前でしょ。嫁を失って、私の精神は崩壊しそうなのよ。私が何をするにも、あの子は文句ばかり言ってたけど、あれは愛情の裏返しだったのよ。

そんな大金をもらってどうするんですか?

世界一周クルーズに行ってくるのよ。あ、もう予約したから。3ヶ月後に出発なの。急がないと席がなくなるのよ。ペアチケットで330万。心を許した人と2人で行ってくるわ。

呆れました。虎の威を借る狐もいいところですね。悪いですが、1銭も払いませんよ。

なんですって?予約金で30万はもう払ったのよ。でも残りの300万を早く払わないと、キャンセル料とか取られちゃうの。90日前ならキャンセル料はかからないけど、予約金は没収されるってわけ。

そうですか。それなら、どうぞ。裁判でも何でもしてください。ただし、恥をかくのはお母さんの方ですけどね。

はあ、負け惜しみを言わないで。浮気した嫁の分際で、偉そうに。

端的に事実をお伝えしますね。慰謝料を払うべきなのは、息子さんの方です。浮気をしたのは、はるかさんなんですよ。

はあ?何言ってるの?はるかが浮気するわけないでしょ。あの子は潔白よ。私に嘘をつくはずがないもの。

信じるのは自由ですが、こちらにも証拠がありますよ。

捏造したのね。なんて汚い女なの。だったら、そちらの証拠も捏造の可能性がありますね。

そんなわけないでしょ。あんたが私を落とし入れようとしてるだけよ。

そこまでおっしゃるなら、はるかさんに直接確認してみたらどうですか?

そんな必要はないわ。どうせ鼻で笑い飛ばされて終わりよ。

では、私の方も笑い飛ばしておきますね。これ以上、無駄な要求をしてこないでください。

逃げるんじゃないわよ。絶対に払わせてやるんだから。

電話が切れた。美奈子は深く息を吐いた。5分後、スマホが震えた。はるかからだ。

さあ、マジで離婚したんだから、もう迷惑かけないでよ。

はあ?何の話だよ。

あなたのお母さんのことよ。悪いけど、今、美奈と旅行中なんだよね。

美奈って誰?

ああ、言ってなかったっけ?新しい彼女。

美奈子は眉をひそめた。ああ、家庭崩壊の原因になったゴミのことね。焼いてるの?まさか。

焼くわけないだろ。それより、母さんが何か言ってきたのか?

言ってきたわよ。私に慰謝料300万払えって。あなたが私に浮気されたって設定になってるんだけど、どういうことか説明して。

いや、だってさ。正直に俺が浮気したなんて言えないじゃん。母さん、俺の事、出来合いだと思ってるからさ。ショックで倒れたら可哀想だし。親を思っての優しい嘘ってやつよ。

自分の保身のための最低な嘘でしょ。そのせいで私が攻撃されてるんだけど。

平気だって。ある程度騒いだら落ち着くから。美奈子はメンタル強いし、大丈夫っしょ。俺の浮気にも耐えたくらいだし。

耐えられないから、離婚したんだけど。

まあ、細かいことはいいじゃん。しかも、母さん、クルーズ予約してたわよ。マジで行動力すげえな。

しかも、あなたも一緒に行くことになってるけど。

はあ?俺が?冗談だろ。

ええ、お母さんがすごく楽しみにしてるって言ってたわよ。ペアチケットで330万払ったって。

マジかよ。母さんと2人で海の上なんて、地獄すぎるだろ。なんとか言ってくれよ。

私は払わないわよ。あなたがやったことでしょう。自分で何とかしなさいよ。

頼むよ。話すと長いから面倒なんだよ。どうすんの?

知らないわよ。美奈子は冷たく言い放った。

ちょっと待てよ。俺、そんなに貯金ないんだよ。美奈子だって、あの時、結構ため込んでただろ?300万くらいはあるだろ。手切れ金だと思って、払ってくれよ。

頭のネジが外れてるわね。私への慰謝料も払ってない人が言うセリフよ。あなたが払えばいいでしょ。

無理だよ。皆の誕生日旅行で散財したし、明日からブランド品店巡りするから、金がないんだ。

そんなお金があるなら、早く慰謝料を払いなさいよ。優先順位ってものがあるでしょ。

じゃあ、事実を全部、お母さんに話すわよ。あなたが今、誰と何をしてるかも含めてね。あと、不倫の証拠写真も送っておくわ。

やめろよ。その女のせいで俺たちの夫婦が終わったんだから、事実を知っておいてもらわないと。

俺が時期を見て説明するって言ってるだろ。なんで堂々と紹介できないんだよ。離婚して1ヶ月で新しい女がいるなんてバレたら、俺が疑われるだろ。

疑うも何も、その女が原因で別れたのは事実じゃない。お母さんにバレたら、俺の立場がなくなるんだよ。

知ったことじゃないわ。あなたが嘘をつき続けるなら、私は戦うだけよ。電話もLINEも無視するなら、証拠を送るから。

おい、待てよ。

美奈子は通話を切った。

30分後、スマホに通知が入った。美奈子からのLINEだ。

みなちゃん、エステ終わったよ。今、フットマッサージ中。あと30分はかかるから、待ってて。

はるかは、すぐに返信した。了解。ゆっくり綺麗になってね。

てかさ、元嫁から連絡きてうざいんだけど。

はるかの隣にいた美奈が、興味ありげに画面を覗き込む。うわ、別れたのに未練たらたら?重すぎるよ。

だよな。30代のおばさんって、必死で怖いよね。

あ、でもさ、その元嫁から金取れるんじゃないの?私、欲しい指輪とバッグがあるんだけど。

余裕余裕。母さんが今頃追い詰めてるはずだし。今日中には300万入るから、この旅行も実質タダだよ。帰りにシャネル寄って、バッグ買ってやるよ。

美奈がパッと顔を輝かせる。しん君、大好き。愛してる。

はるかは、もう一人の美奈子からのメッセージに目を通した。元嫁ってケチだから、結構ため込んでると思うんだよ。

でも、実際浮気したのはこっちなんだし。元嫁が払う必要ってないよね。

ないよ。だから、作戦なんだよ。弱みを握ってるんだ。300万くらいなら絶対出すよ。

美奈がクスクス笑う。すごいよ、しん君。私たちのATMでいてくれて、ありがとう。

本当それな。俺らの愛のためにも、もっと働いてもらおうぜ。

その頃、美奈子はスマホの地図アプリを見つめていた。次の日、旅先のホテルで、はるかの母親から電話がかかってきた。

もしもし。美奈子?あと1時間しかないわよ。

何かの締め切り時間でしたっけ?

クルーズ代金の支払い期限でしょ?毎日LINEしてあげてるじゃない。さっきも送ったわよ。

美奈子はため息をついた。その件なら、払わないと言ったはずです。先日、はるかさんにも確認しましたが、お母さんに嘘をついたことを認めてましたよ。

まだ息子のせいにする気?往生際が悪いわね。

探偵が撮った写真を送りましたけど、見ました?あれが何よりの証拠です。はるかさんが新しい女性と歩いている写真です。お母さんが見たがっていたので、送ってあげたんですよ。

はあ?何言ってるの?

あの写真、はるかさんの新しい彼女と一緒にいる写真ですよ。浮気の決定的な証拠です。もしや、お母さん、あれを見てなかったんですか?

電話の向こうが、しばらく沈黙した。

……何て?

だから、あの写真が証拠です。はるかさんが浮気をしていました。離婚の原因は、はるかさんの方にあるんですよ。ですから、慰謝料を払うべきなのは、むしろはるかさんの方です。うちの方は、もう請求しません。ただし、今後、私に連絡するのはやめてください。弁護士に相談しますから。

しばらく沈黙が続いた後、受話器の向こうから、かすれた声が聞こえた。

……まさか……あの子が……

美奈子は静かに電話を切った。そして、手に持っていたキャンセル料の説明書をゴミ箱に捨てた。窓の外には、青い海が広がっていた。彼女はもう、あの家族の争いに関わるつもりはなかった。ただ、自分の新しい一歩を踏み出すために、荷物をまとめ始めた。

数日後、美奈子のスマホに、見慣れない番号から着信があった。出ると、はるかの声だった。

……おい、母さんが急に連絡してこなくなったんだけど、何かしたのか?

知らないわよ。こっちこそ、もう連絡しないでって言ったからじゃない?

違うんだよ。なんか変なんだよ。急に何も言わなくなって。クルーズもキャンセルしたらしいし。

そう。美奈子は冷たく言った。あなたがついた嘘のせいでしょ。お母さんも真実を知ったんじゃない?

真実って……俺が浮気したことか?

写真、見せたから。美奈が新しい男と歩いてるところ。

はるかは絶句した。

お前……よくも……

悪くないでしょ。あなたが私のことをATM扱いしたから、その代金よ。もう連絡しないで。私たち、終わったんだから。

美奈子は一方的に電話を切った。そして、深呼吸をした。もう二度と、あの家族に関わることはない。心が軽くなるのを感じながら、新しく借りた部屋の鍵を握りしめた。窓の外では、夕日が静かに沈んでいこうとしていた。彼女はこれから、自分自身のために生きていくのだ。

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