「今日病院に行ってくる。腰が痛くて仕方ないから、夜ご飯は自分で何とかしてくれないか」そう言った私に、夫は「料理もできないのか」とため息をついた。「双子だから、これからもっと大変になる。二人で協力していかないと」と伝えると、彼は「俺は仕事で金を稼いでる。子育てはお前に任せる。限界が来たら助けるが、最初から甘えるな」と冷たく言い放った。その一週間後、親友のカナに「男なんて所詮そんなもんよ」と笑わ…

「今日病院に行ってくる。腰が痛くて仕方ないから、夜ご飯は自分で何とかしてくれないか」そう言った私に、夫は「料理もできないのか」とため息をついた。「双子だから、これからもっと大変になる。二人で協力していかないと」と伝えると、彼は「俺は仕事で金を稼いでる。子育てはお前に任せる。限界が来たら助けるが、最初から甘えるな」と冷たく言い放った。その一週間後、親友のカナに「男なんて所詮そんなもんよ」と笑わ...

腰が痛くて仕方ないから、今日病院に行ってくる。夜ご飯は悪いけど、自分で何とかしてくれないか。
料理を作れるような状態じゃないの?
無理だと思う。家に帰っても、きっと横になってるだけで終わりだよ。
そう……まあ、それなら仕方ないか。できれば早く帰ってきてほしいけど。
それは無理だな。仕事が立て込んでて、帰りはどうしても遅くなる。
そうなんだ。仕事が大変なのは分かってるけど、家のこともちゃんと考えてほしいんだよね。
どういう意味だ?
お腹の子、二人なんだよ。双子なんだから、子育ても倍大変になるってこと。だから、二人で協力していかないと。
いや、俺は仕事を頑張って金を稼いでるだろ。子育てのことは、お前にやってほしい。
もちろん、できる限りはそうするよ。
でも、一人でできることには限界があるって。
限界を迎えたら、その時は助けてやるよ。
でも、最初からそんなに助けを求めるようなことはやめてくれ。甘えられても困るんだ。

あなた、ちゃんと子供が生まれることを喜んでくれてる?
何だよ、急に。
いや、なんか、そういう気持ちが伝わってこないなと思って。
俺は仕事を頑張ると言ってるだけだろ。家のことはお前に任せる。
別に協力しないとは言ってないだろ。変な被害妄想はやめてくれ。
……うん、分かった。それじゃあ、お仕事、頑張ってね。

それから一週間後。
ねえ、カナ、体調はどう?この前、すごく悪いって言ってたけど。
うん、今はだいぶ良くなったよ。でも、まだ腰は座ってる感じで、また悪くなるかもしれないけどね。
本当、妊娠って大変だね。
そうなのよ。子供ができたって分かった時は、もちろん嬉しかったけど、まさかここまで大変だとは思わなかったわ。
しかも双子だもんね。
そうそう。早く会いたいなって気持ちもあるけど、私にちゃんと育てられるのかなって、不安のほうが大きいわ。
……まあ、私にはちょっと想像もできないけどね。
そういえばカナって、全然結婚とか考えないの?
うん、全く。
仕事も忙しいし、男の子は割り切って遊べればそれでいいって思ってるから。
前からそういう考えだったもんね。
そうそう。男なんて、所詮はそんなもんよ。変に責任を背負わされるのは、まっぴらごめんだわ。
カナのそういうところ、すごいなって思うよ。
まあ、そうだからこそ、仕事もうまくいってるのかもね。
ふうん、どうだか。でも、そういう考え方だから、いろいろ回ってきてるんだと思うけどね。
それで、今は彼氏とかいないの?
彼氏って感じじゃないけど、一応、遊んでる人はいるよ。
へえ、やっぱりそうなんだ。
なんかね、最近どんな男と遊んでも、物足りないっていうか、刺激がないっていうか。
そうなんだ。
だったら、思い切って結婚してみるとか?
いや、結婚とかは、私にはないわ。
むしろ男の方から、すごく近づいてきたりしない?
うん、まあ、それはあるわね。
でも、そういう奴らって、大抵は金目当てだから。
だから、全然相手にしてないわよ。
ふうん、なんだかんだ言って、ちゃんと考えてるんだね。
そんなことないわよ。
でも、こういう性格だから、同性からはすごく嫌われるのよね。
私と学生時代からずっと仲良くしてくれてるのなんて、はるかくらいなんだから。
そうだっけ?
そうよ。本当、物好きなんだからね。
そんなことないって。
私だって、カナと一緒にいるのは楽しいしさ。
……ありがとう。はるかにそう言ってもらえると、元気が出るわ。
それじゃあ、また今度、一緒に遊ぼう。
うん、是非。
子供が生まれたら、真っ先に顔を見せるからね。
楽しみにしてるわ。

その一週間後。
ねえ、はるか、聞いたわよ。また病院に行ったんだって?
え、なんで知ってるんですか?
一から聞いたわよ。
本当に、病院ばっかり行って、どうするつもりなの?病院の人はお仕事でやってるんだから。
座りがひどくなった時は、すぐに病院に来るようにって言われてるんです。
ですから、何も問題ありません。
今からそんなことでどうするの?子供を育てる親として、もっとしっかりしなさいよ。
できることなら、そうしたいですよ。
でも、そう簡単にはいかないんです。
お母さんだって、同じ経験をしてきたでしょ?
だとしても、すぐ病院に駆け込むのはやめなさい。
自分で何とかしようって考えないと。
生まれてくる子供だって、不安でしょう?
私のように、いちいち周りを頼ってばかりじゃ、ダメな親になるわよ。

私、そんなにすぐ頼ってるつもりはありません。
……あの人は、私が頼ってくると困るって言うんです。
あの子はあの子で、仕事を頑張ってるんだから、邪魔をしちゃだめよ。
私は、私のできることはやってます。
でも、第一に子供のことを考えなさい。
自分のことなんて、後回しにしてでも育てるっていう気持ちがなきゃ、親なんて務まらないからね。
それは、言われなくても分かってます。
……敬一はね、私が一人で育てたのよ。
正直、周りは誰も助けてくれなかったわ。
それでも私は、歯を食いしばって頑張ったの。
あなたにも、それぐらいのことをしてもらわないと困るわ。
お母さんが素晴らしい親だったのは分かります。
でも、私は、頼れるものは頼ったほうがいいと思ってます。
病院に行くのも、お腹の子供に何か異常がないかを確かめるためなんですから。
ケーイも、あなたに頼られたら困るって言ってたでしょ。
あの人は家のことを、全部あなたに任せたいんだから。
私の言ってることも、分かってるはずよ。

まあいいわ。
とにかく、あなたがしっかりしなさいって言ってるだけ。
……分かってます。

数ヶ月後。
健一が出て行ったと聞いて、私は駆けつけたわ。
ねえ、健一は?ちゃんと会いに来てくれないの?
ああ、あなただったの……。
あなたの子供が生まれたんだよ。
それなのに、来てくれないの?
……悪いんだけど、俺、やっぱり無理だわ。
は?何言ってるの?
俺には、父親になる資格なんてないんだ。
何言ってるのよ、そんなこと。資格とかそういう問題じゃないでしょ?
いや、本当に申し訳ないと思ってるんだ。
でも、やっぱり俺は、子育てなんてしたくないんだよ。
……は?
俺の人生は、俺のためにあるんだ。
子供のために、自分の人生を犠牲にするなんて、ごめんだよ。
何を馬鹿なことを言ってるの!
もう子供は生まれたんだから、責任を取らなきゃダメでしょ!
……そうだな。
まあ、分かったよ。
俺も、責任は取ろうとは思ってるんだ。
でも、しばらくは別居ってことで頼むよ。
そのことだけは、どうしても譲れないんだ。
別居って……どういうこと?
まあ、そうだな。
子供が、もう手がかからなくなったら、俺は家に帰ってくるよ。
そうしたら、父親として、あいつらに接してやるつもりだ。
でも、子育てとか、そういうのは本当に無理なんだ。

そんなの、絶対に許されるわけないでしょ!
もし本気でそんなことをするなら、私、健一の会社に行くからね!
……安心しろよ。
もう会社は辞めてある。
お前には分からないように、別の場所で仕事をしてるんだ。
住むところも、実はもう決めてあるんだぜ。
嘘でしょ……?
本当だよ。
前から準備は進めてたんだ。
……あなたが、そんなに無責任な人だったなんて、思わなかった。
だったら、どうして私と結婚したのよ。
そりゃあ、お前と結婚したら幸せになれるかなって思ったからさ。
でもなあ、さすがに一度に二人はやりすぎだよ。
もうちょっと、ちゃんと考えてくれないと、俺も困るんだよ。
何よ、それ。本気で言ってるの?
本気だよ。
とにかく、俺はお前とは距離を置かせてもらう。
……なんか、隠してることはない?
言ってることが、どうしても変なんだよ。
何もないよ。
俺は、本心で言ってるだけだ。
そんな、理不尽な理由で別居なんて、許されるわけないでしょ!
まあまあ、そう怒るなよ。
もし困ったら、国とか役所を頼れば、何とかなるだろ。
うちの母さんだって、一人で俺を育て上げたんだ。
だったら、お前にもそれぐらいできるだろう。
簡単に言わないでよ!
……それじゃあ、また会おう。
それまで、元気でな。

無責任すぎるでしょ!
俺は、俺のやりたいようにやらせてもらうだけだ。
ふざけるな!こっちの気持ちは、どうでもいいって言うの!?

健一は、それだけ言うと、二度と私の前から姿を消した。
私は、生まれたばかりの二人の子供を抱え、一人ぼっちで取り残されてしまった。
あの日の、あの言葉の一つ一つが、今も心の中で繰り返される。
私が何か間違っていたの?
いや、間違ってない。
私は、家族としてやっていきたいだけだった。
健一は、逃げ出した。
自分が父親になるという、その重みから。
私は、目の前で泣き続ける子供たちを、ただ見つめることしかできなかった。
どうにかして、育てていかなければ。
頼れるものは、何でも頼ろう。
だって、私は一人じゃない。
子供が二人、ここにいるんだから。
私は、震える小さな手を、そっと握りしめた。
大丈夫。なんとかなる。
そう自分に言い聞かせながら、私は二人の小さな寝顔を見つめていた。

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