結婚式の費用を全部出してくれたお母さんに、私は突然「式には来ないでください」って言った。だって、お母さんは私が小さい頃に私を捨てて、ずっと会ってもいなかったから。お母さんは泣きながら「息子の式に出るのが夢だった」って言ったけど、私は「親の資格なんてない」って一蹴した。その後、お母さんは5分後に電話をかけてきて、私の婚約者に「この女はあなたを捨てた人間だ」って言ったの。でも、私はもう決めたの。…
お母さん、結婚式代600万円、本当にありがとうございます。 「いえ、いいのよ。ちょっとでもいい式になればね。」 「これでとってもいい式ができそうですよ。でも、家族の同意を得た上で、お母さんは呼びません。」 「え?何を言ってるの?」 「とってもいい式にしてほしいと思ってるんですよね。」 「そうよ。そのために炎上したんだから。」 「でしたら、式には来ないでください。お母さんが来ると式が台無しになるので。」 「ちょっと待ってよ。私が参加できないなんてありえないわ。私は弘樹の式に参列するのを心から楽しみにしてるんだから。」 「申し訳ないですけど、あなたに参加の資格はありませんよ。そもそも、弘樹の親を名乗るのもおこがましいんですから。」 「どういうこと?」 「あなたは離婚して弘樹とは別々に暮らしてたんですよね。」 「そうね。」 「弘樹のお父さんはそこから一人で育ててたんです。だからお父さんは参列していいですけど、あなたにはその資格はないですよ。もしかしてお金を払えば参列できると思ってました?そんなわけないですよね。親としての責任をあなたは全て放棄してたんです。そんな人を親とは呼べませんよ。」 「離婚をしたのは私が悪かったの。それは確かに認めるわ。でも放棄をしたわけじゃない。私だって弘樹のそばにいたかったわ。」 「今さらそんなことを言っても意味ないですよ。あなたは実際に弘樹を見捨てて一人で生活してた。結婚式費用の600万円を用意したのは偉いなと思いますけど、だからと言って許せるわけにはいきません。」 「そんなお金、どうやって集めたのかはあえて聞きませんよ。でも、どうせ借金しまくって集めたんでしょ。」 「そんな貧乏人に私たちの式に来てほしくありません。なので、どうぞ不参加でお願いしますね。」 「待ってよ。それは弘樹も知ってるの?」 「弘樹には私から説明しておきます。あなたもどうか弘樹のことを思うなら不参加でお願いしますね。」 5分後。 「ひろ、さっきゆみさんから連絡があったの。」 「もしかしてお金のことかな?本当にありがとうな。こんな時に親を頼るなんて社会人として情けないよ。」 「そんなのはいいのよ。私としてはあなたに頼られて嬉しかったんだから。」 「あんな大金を払わせるなんて申し訳ない。」 「それは別にいいんだけど。ゆみさんから、式には参列してほしくないって言われて。」 「え、なんで?」 「私にはあなたの親を名乗る資格はないって。そんなバカな。あいつは何を言ってるんだ?」 「それに、あなたのお母さん、私に言ったのよ。『あなたは私の息子を見捨てた。そんな人に親の資格はない』って。」 「ひどい…。確かに俺は母ちゃんに迷惑かけたけど、でも…。」 「ひろ、私はね、あなたのことが好きで結婚するんだよ。だから、あなたの母親がどう思おうと関係ない。でも、ゆみさんがそこまで言うなら、私も一度ちゃんと考えたい。」 「考えたいって…。」 「式の当日、ゆみさんが来ないって決めたら、私もどうしたらいいか分からない。でも、あなたと結婚したい気持ちは変わらないわ。」 「俺もだ。」 「だけど、ゆみさんは本当に来てほしくないみたい。私はあなたを選ぶけど、式のことは…もう少し時間をもらえる?」 「ああ、分かったよ。」 その夜、弘樹は母に電話をした。 「母ちゃん、なんでそんなこと言ったんだよ。」 「だって、あの人はあなたを見捨てたんだよ。許せないんだよ。」 「俺は母ちゃんのことを許してるよ。でも、あの人だって俺の母親だろ?」 「そんなのは違うよ。本当の親は責任を果たす人だけだよ。」 「じゃあ、俺も責任を果たせなかったら、親じゃないってことか?」 「違うよ、あなたは違うよ。」 「母ちゃん、俺は自分の結婚式に母ちゃんがいてほしいんだ。もし母ちゃんが来ないなら、俺も式を挙げないよ。」 「そんなこと言わないで…。」 「本気だよ。俺は母ちゃんが認めてくれないなら、結婚できないよ。」 電話の向こうで、母はしばらく黙った。 そして、ゆっくりと「ごめんなさい」と呟いた。 「私が悪かったわ。息子の幸せを考えるべきだった。」 「母ちゃん…。」 「式に参列させてくれる?今度こそ、本当の親として、あなたの幸せを見たいの。」 そして、式の日。弘樹と由美は結婚した。母は参列しなかったが、式の後に二人の家に来て、泣きながら謝った。 「これからは、ちゃんと親として責任を果たすわ。二人の幸せを陰ながら見守らせてほしい。」 由美はその言葉を黙って聞き、頷いた。 弘樹の目には涙が光っていた。