「お母さん、明日の結婚式、来なくていいから」…
「勝手なことすんじゃねえよ!」 母が漬け物を送っただけで、姉は烈火のごとく怒った。婚約者の家に送った漬け物が、どうやら気に入らなかったらしい。 「顔合わせのときに、ぜひ食べてみたいっておっしゃったから、お礼にと思って送ったのよ」 「大使系のバリキャリのオタクに、安物の漬け物なんて恥ずかしすぎるでしょ!」 「余計なことだったなら、ごめんなさい。もうしないわ」 「ごめんで済む話じゃないから、もう勝手なことしないでよ。式のことも一切口出ししないで」 翌日、姉は母に言った。 「あちらのお母様から、お礼のLINEが届いたの。『お漬け物ありがとうございます』って」 「社交辞令に決まってるでしょ」 「怒ってる様子はなかったから、それだけ伝えたくて」 「あんな安っぽいものもらって、内心ドン引きしてるに決まってるじゃん。とこさんは優しいから言わないだけよ」 「お母さんのせいで、とこさんに嫌われたらどうしてくれんのよ」 母は何も言い返せなかった。 「とにかく今後は何も送らないで。これ以上、私の顔に泥を塗らないで」 「分かった。勝手なことしてごめんなさい」 「それと、私あの漬け物大嫌いだから、二度と作らないで」 「え、子供の頃からよく食べてたじゃない」 「高校の時、毎日お弁当に入れられてさ、友達から『バクオリティ』って笑われてたんだよ。好物だと思って入れてたけど、一緒に歩くのも嫌。参観日も嫌。視界に入るのも嫌」 「そこまで言わなくても、マジで息だけしてて」 翌日、姉は母に言った。 「式場から、お花のことで追加で30万かかるって連絡あったから、お金出して」 「30万も?」 「とこさん側の親戚も来るんだよ。テーブルの花が見すぼらしいなんて、絶対に恥ずかしいから、どうにかしないと」 「分かった。通帳に300万あるわ」 「え、よかったら私にして」 「なんでそんな大金持ってんの?」 「風華が生まれた時から、少しずつ生活費を切り詰めて、お嫁に行く時のために貯めてたの。たまには役に立つじゃん」 「でも結局はパパの稼いだお金だよね」 「そうだけど、家計費として預かったお金から貯めたものよ」 「偉そうに自分の手柄みたいに言ってるけど、所詮はパパのおこぼれをストックしてただけじゃん」 「まあ、そう言われればそうね」 「だったら感謝はパパにしかしないよ」 「それでも構わないわ。感謝されると思ったのに、残念だったね」 「そんな風に考えてないわよ。パパ、ありがとう」 数分後、父が怒鳴り込んできた。 「お前、俺の金から300万もくすねやがったのか?」 「違う。生活費を節約して貯めただけ」 「風華には自分の手柄みたいに言ったらしいな」 「そんなことないわよ」 「本当はもっと溜め込んでんじゃないだろうな」 「あれで全部よ。風華のために貯めてたんだから」 「同じ服ばっか着て、貧乏臭い飯しか作らないのに、これしか貯まらないってことはないだろう」 「猫ばばなんてしてないわ」 「まあ、風華が喜んでるからよしとしよう」 「来月の結婚式、楽しみね。相手の方も素敵な方だし、幸せになってほしいわ」 「なんでお前が浮かれてるんだよ」 「そりゃ一人娘の門出だもの、嬉しいわよ」 「風華に恥をかかせんなよ」 「分かってるわ。大人しく末席に座ってるから」 一ヶ月後、姉は母に言った。 「お母さん、明日の結婚式、来なくていいから」 「え、ちょっと待って。どうしてそんなこと言うの?」 「席用意してないから、来たくても無理だよ」 「自分の娘の結婚式に出られないの?」 「うん。両親が揃ってないのは微妙かなと思ったけど、どう考えてもあんたを人前に出す方が恥ずかしい」 … Read more