妊娠したと告げた瞬間、夫は言った。「それはあの子の子だから、責任を取って再婚するわ」。私は半年間、不妊治療の痛みに耐えてきた。なのに彼は、私の留守中に実の兄の妻を我が家の寝室に招き入れていた。証拠の映像を見せても「AIだろう」と笑った夫。義姉は「奥さんに原因があるのよ」と開き直った。全てを失った二人は、それでも幸せそうに式場の下見に来た。そこへ親族、友人、会社の人間が続々と集まってきた。私た…
「お兄さん、突然何の冗談ですか?」 「本気だ。行動がおかしいんだよ。例えば、運動嫌いのエリカが突然ウォーキングを始めたんだ。」 「健康のためじゃないんですか?」 「としても、夜の二十三時頃に出ていくのはおかしいだろ。」 「確かに、それはちょっと遅いですね。」 「女性の一人歩きは危険だって言ったんだが、深夜の方が静かだからって聞かなくてさ。」 「それはいつからですか?」 「半年くらい前だよ。」 「実は……浩さんもランニングと言って、同じ時間帯に外に出るようになったんです。」 「いつからだ?」 「半年くらい前ですね。」 「同じ頃だな。こっちは男だし、大して気にしてなかったんだが。」 「何時頃に帰ってくるんですか?」 「一時少し過ぎたくらいだ。」 「エリカもそのくらいだよ。」 最初は運動ならいいことだと思って応援していた。しかしある日、エリカのウォーキングに行く姿が気になった。夜中だというのに化粧が濃いのだ。 「確かに変ですね。夜中だし、私ならメイクはしません。」 「だろ?胸騒ぎがしてな。三日前の晩、後をつけたんだ。」 「浩さまとお姉さんが会ってたってことですか?」 「うん。俺らの家の中間地点に公園があるんだが、そこで二人が会ってたんだ。」 「ホテルとかじゃないなら、相談事とかじゃないんですか?」 「信じたい気持ちは分かるよ。でもな、二人で多目的トイレに入るのはおかしくないか?二十分も出てこなかったんだぞ。」 「信じられません……私たち、仲良くしてますし、夫婦仲が悪いとかもありません。」 「うちもそうだった。だから驚いてるんだ。」 「夫に聞いてみます。」 「待ってくれ。」 「どうしてですか?」 「お姉さんの具合が悪くなって、付き添いで一緒にトイレに入っただけかもしれないだろ。」 「三日連続で具合が悪くなってトイレに入ると思うか?あの日から毎日定期行してたんだ。本当に具合が悪いなら、ウォーキングなんて休むはずだ。」 「確かに、おっしゃる通りです。」 さとみに話すべきか迷った。だが、妊活もしていると聞いていた。真実を知るなら早い方がいいと思ったのだ。 「辛い思いをさせてごめんな。」 「いえ、辛いのはお兄さんも同じですから。」 「俺も一応スマホで動画は撮ったんだが、暗いせいかあまり顔が映ってなくてな。弁護士の友人に相談したら、これじゃ言い逃れされるかもしれないって言われた。」 「はっきり顔が映った証拠が必要ってことですか?」 「そうなんだ。だから、俺は直近でいくつか出張を入れることにした。さとみちゃんもどこか行くことできないかな?」 「私たちが同時にいなくなれば、相手が動き出すってことですか?」 「そう。その日に探偵をつけようと思ってる。」 「分かりました。ちょうど良かったんです。母の体調が悪いみたいで、近々実家に帰ろうと思ってたところだったんです。」 「出張は来週の火曜日なんだが、その日でいいか?」 「はい。浩さんにもそれとなく言っておきます。」 「じゃあよろしく。」 翌日、さとみが夫に言った。 「来週の火曜日なんだけど、実家に帰っていいかな?」 「何かあったのか?」 「母さんの具合があまり良くないって言ってたでしょ。少し悪化しちゃったみたいで。父さんも疲れてるみたいだし、手伝ってあげたくて。」 「それは心配だね。帰ってあげた方がいいよ。」 「ありがとう。排卵日なのにチャンス逃しちゃうけど、ごめんね。」 「また来月頑張ればいいじゃん。」 「うん。そうだね。ご飯はどうする?」 「適当に外で食うから大丈夫だよ。俺のことは心配しなくていいから、何日かゆっくりしてきなよ。」 「いい旦那さんでよかった。」 「だろ?じゃあ遠慮なく行かせてもらうね。」 「お母さんとお父さんによろしくな。」 数分後、さとみは兄に電話した。 … Read more