「母さんのどこを尊敬できるんだ?」——反抗期だと思っていた20歳の息子が、夫の浮気を笑いながら祝福した日のこと。私は夫の口座から消えた100万円を問い詰め、証拠のボイスレコーダーを突きつけて離婚を切り出した。なのに、息子は父の味方につき、「若くて美人な新しい女の方がマシ」と私に言い放った。実家に追い出されるように帰った私は、息子にも夫にも捨てられたと思った。そして数ヶ月後、息子から一本の電話…

夫の口座から約100万円が消えているのを見つけたのは、月末の家計簿を締めているときだった。 「これは何に使ったの?」 問い詰めると、夫はあからさまに動揺した。 「仕事の付き合いだよ」 「仕事の付き合いでホテルに何度も行くの? あなた、浮気してるでしょ」 「そんなわけない!」 「証拠はあるの。ホテルの出入りが確認できてる。あと、あなたの鞄にボイスレコーダーを仕込んでおいたの。楽しそうな声がたくさん録れてたわ」 夫の顔色が変わった。言い訳も虚しく、彼はようやく観念したように頭を下げた。 「…悪かった。許してくれ」 「許さない」 「でも、お前にも原因があると思うぞ」 「例えば?」 「年を取ったじゃないか」 「あんたも取ってるでしょ。20年前から何も変わってないって言えるの?」 「…そうだ。だから若い子に走ったんだ」 私は呆れて笑うしかなかった。 「じゃあ、離婚しましょう。私はこれから自分の人生を生きるわ」 「ふざけるな! 一方的に終わるなんて許さないぞ」 「浮気した分際で何言ってるの?」 夫は最後にこう提案した。 「こうしないか。お互い自由にしながら結婚生活を続けるんだ」 「何のために?」 「世間体とか、子供のためとか…」 「りん太郎はもう20歳よ。もう大人じゃない。私は世間なんて気にしない」 そう言って、私は実家に帰ることにした。ところが、息子の反応が私の予想を覆した。 「お母さん、しばらく実家に帰るから」 「なんで?」 「お父さんに聞いて」 「まさか、浮気してたとか?」 「あなたももう大人だから隠さなくてもいいわ。その通りよ」 すると、息子は笑い出した。 「はぁ。親父、やるじゃん」 「…何言ってるの?」 「だって、これが男の甲斐性ってやつだろ? 浮気もできないダサい男よりマシじゃん」 「あなた、お父さんの味方なの?」 「そりゃそうだろ。力がある父さんの方がかっこいいし。父さんが浮気したのは、母さんが魅力ないからだろうしな。専業主婦で家にいるだけの母さんのどこを尊敬できるんだ?」 私は言葉を失った。反抗期が長引いているだけだと思っていた。でも、どうやら本心らしい。 「母さんがいつまで経っても説教臭くてだるいんだよ」 「あなたが20過ぎてもしっかりしないからでしょ!」 「そういうとこだよ。父さんみたいにほっといてくれたらいいのに」 数日後、息子は父にこう言ったらしい。 「父さん、浮気したんだって? 相手の女に会わせてよ。若くて美人なら俺は賛成だから」 夫は嬉しそうに息子の肩を叩いた。 「やっぱりお前は俺の息子だな。分かってくれて嬉しいよ」 「母さんも実家に帰ったし、このまま離婚して新しい女と結婚すればいいじゃん」 「まあ、そうなるだろうな。次の週末に家に呼んでいいか?」 「最高じゃん。俺も会うの楽しみにしてるよ」 私は息子に家を出る前に言われた言葉を思い出す。 「母さん、もういい歳なんだから、素直に別れてやれば?」 そんな息子の態度に、私は深く傷ついた。夫にも息子にも必要とされていないのだと、初めて思い知らされた気持ちだった。 数週間後、夫の浮気相手・野々花さんが家に来るようになり、そのまま彼女は家に居座ることになった。まだ離婚も成立していないのに。 … Read more

2 September 2026

「中卒の嫁は他人だから、出産祝いにも来るな」――義母にそう言われ、私は病院の廊下に追い出された。6年間、毎月25万円の仕送りをして、何を言われても笑って耐えてきた。それでも私は、家族として認めてもらえなかった。義妹には「汚い金を子供に移すな」と言われ、心を込めて選んだ出産祝いのおくるみは「捨てる」と宣告された。だけど、私はひとつだけ、彼女たちが知らないことを知っていた。その日、私は仕送りを止…

お母さんからの電話は、いつものように用件だけだった。 「あいさん、今月の仕送りまだ届いてないわよ。遅いのよ。毎回ちゃんとしてくれない?」 「すみません。今月は25日が土曜なので、月曜振り込みになります」 「言い訳しないの?中卒だから振り込みの仕組みも分からないの。夫の稼ぎを振り込むだけの簡単な作業くらいさっさとやって欲しいわ」 私は中卒だ。それは事実だった。 でも、その言葉が毎回胸に刺さる。 「息子の会社でお手伝いしかしてないから、ちゃんとしたこともできないのよ。そんなんだから集まりにも呼ばれないの。自覚ないのかしら?」 「それじゃあ今年も……」 「え、正月は来なくていいから。近所に中卒の嫁がいるのバレたくないのよ」 「……分かりました」 それでも私は耐えてきた。家族に認めてもらいたかったから。 数週間後、義妹のミユさんが出産した。 ミユさんとは何度もやり取りして、出産祝いに何が欲しいかも聞かれていた。 おくるみが欲しいと言われたから、心を込めて選んだ。 「今日、ミユさんの出産祝に行ってくる」 友人のアイに言うと、彼女は呆れ顔で言った。 「ああ、例の件ね。あんたこの前も正月来るなって言われたばっかじゃん」 「うん。でも赤ちゃんは関係ないし、お祝いくらいさせて欲しいから」 「あんたは優しすぎるよ。自分のこと馬鹿にする人の子供なんて、私は祝わないな。そりゃ子供に罪はないけどさ」 「その辺りは割り切ろうと思って」 「まあ、なんかあったらすぐ連絡しなよ。あんたすぐ抱え込んじゃうから」 「うん。ありがとう」 病院に着いて、お母さんにLINEを送った。 「お母さん、病院に到着しました。部屋番号を教えてもらえませんか?受付で名前を記載しないといけなくて」 返信はなかった。 30分後、もう一度送った。 「すみません。もう30分待っているのですが、夫も電話してますし。どこにいるんですか?」 すると、返ってきたのは冷たい言葉だった。 「あら、やだ。本当に来たの?出産祝に勝手に中卒夫婦が紛れ込んでるわ」 「え、お母さん、ケ太さんが招待されてきたんですけど」 「ケ太は家族だから入っていいわよ。でもあんたはダメ」 「どういう意味ですか?私も一緒に招待されたと思っていたんですが」 「誰があんたを招待したのよ。家族だけで祝うに決まってるでしょ」 「あの、赤ちゃんのお祝いだけでも渡させてもらえませんか?一目見たら帰りますから」 「いらないって言ってるでしょ。中卒が選んだものなんて、赤ちゃんに触れさせたくないのよ」 「……分かりました。では失礼します」 「さっさと消えろ」 病院の廊下で呆然と立ち尽くしていると、ミユさんの声が聞こえた。 「ああ、よかった。ちゃんとお姉さん帰ったんだ。これで一安心。病室に来たらどうしようかとずっと気が気じゃなかったんですよね」 「あいさん、どうしてそんなことを?」 「正直、中卒の人に赤ちゃん触られたくなかったんだよね。汚い金を子供に移すな。私の可愛い赤ちゃんの目にも映したくないんで。お坊さんは帰って」 「……そう。あなたもそういう態度なのね。よくわかったわ」 「は?何それ?上から目線きし中卒のくせに」 出産祝いの品は置いてあったみたいだけど、お母さんが捨てるって言ったらしい。 「そうですか。分かりました。好きにしてください」 私は病院を後にした。 翌日、お母さんから電話がかかってきた。 「昨日はよくもやってくれたわね」 「え、お母さん……」 「ミユに変なLINE送ったんでしょ?あの子は出産直後で疲れてるのよ。それなのに勝手に押しかけてきて。赤ちゃんだって生まれたばかりで免疫もないのに、あんたが来たせいでストレスかかったのよ」 「招待されたから伺ったんですけど、それに会わずに帰りました」 「ケ太を招待したの。あんたは呼んでないって何度言わせるの?おかげでミユが泣いてたわよ。せっかくのお祝いを台無しにされたって」 「台無し……病室にすら入ってもいないですけど」 「入ろうとしたでしょ。全く空気読めないわね。これだから中卒は。あんたが余計なことしなければ、昨日はミユにとって最高の日だったの。今後はうちにも来ないでちょうだい」 「実家にもですか?」 … Read more

2 September 2026

「あの日、自分の誕生日会で、嫁に『家族だと思ったこともない』と言われた。プレゼントは『ゴミになる』と突き返され、私は『赤の他人』として、たった一人で庭に立っていた。 それから一年後、今度は私の母の葬式。息子夫婦が持ってきた香典は、なんと一万円。『お母さんの価値はそれだけってこと?』と問い詰めると、息子は言い放った——『じゃあ、今日で最後にしましょう』。…

「もう、早く帰ればいいのに」  私はつい、そう呟いていた。  今日は孫の誕生日会。なのに、私はほとんど知らない人ばかりの庭にひとりで立っていた。リサ——息子の嫁に、私は「家族だと思ったこともない」と言われているのを、偶然耳にしてしまったのだ。  あの瞬間、空気が凍った。 「お母さん……聞こえてました?」 「ええ……まあね」 「すみません。でも本音なんで」  そう言われて、私は何も言い返せなかった。息子の龍二に誘われて来たものの、どうやら彼は妻のリサに「来ても無視しろ」と言われているらしい。私はただの「赤の他人」として、そこに居場所がなかった。  それでも、私はプレゼントを用意してきた。一歳の男の子が喜びそうな絵本とおもちゃ。でもリサはそれを見て、鼻で笑った。 「マジか。もういらないんで、持って帰ってください」 「はる樹君は気に入ってくれるかもしれないじゃない?」 「ゴミになるだけなんで」  その言葉に、私は何も言えなかった。リサは続ける。 「お金くれれば一番嬉しいんですけどね。そういうの、わかんないんですか?」  私は、ただ息子の家族と仲良くしたかっただけなのに。  翌日、夫の雄二に愚痴った。すると彼は言った。 「俺も聞いてたよ。リサに言われてたんだ。俺が来ても無視しろって。そうすれば5分で帰るだろってさ」 「何なのよ、それ……」 「お祝い目当てに決まってるじゃん。お前も大概だと思ったけどな。リサすごくがっかりしてたぞ」  まさか、夫までもが私を責めるなんて。私は反論した。 「お祝いの額で付き合い方を変えるっていうの?私は孫が喜ぶものを選んだだけよ」 「はるきに好かれたかっただけだろ?それこそエゴじゃないか」 「あなた、結婚する前は優しい子だったじゃない」 「別に変わったつもりはないけどな」  その日のうちに、私はこう宣言した。 「そう。じゃあ、今後一切関わらないことにしましょう」 「ああ、それでいいよ」  本当に、それで終わると思っていた。  それから三ヶ月後。今度は私の母が亡くなった。  葬儀の日、息子夫婦が弔問に来た。驚いた。あれほど縁を切ったと言ったのに。でも、彼らが来た目的は、手ぶらではなかった。 「お悔やみ申し上げます。あの、これ、香典です」  差し出された封筒の中身を見て、私は言葉を失った。一万円。 「何なんですか、これ」 「え?」 「私の母は、一万円の価値しかないって言いたいの?前にリサさんがくれた誕生日プレゼントは、安いおもちゃでいいと言ったのはあなたたちじゃない。そういう気持ちの問題でしょ?」 「あの時は俺たちも苦しかったんだ」 「私はそれを聞いて許せるほど、できた人間じゃないわね」 「じゃあ、今日で最後にしましょう」 「ええ、願ったり叶ったりよ」  その日、私は本当に、この人たちと縁が切れたと思った。  ところが。一年後。一通のLINEが届いた。 『お母さん、ご無沙汰してます。お元気ですか?リサです』  私は思わずスマホを見つめた。確かに、ブロックはしていなかった。設定の仕方が分からず、そのままにしていただけだった。  リサは言った。 「あの時は私も育児疲れでどうかしてました。1年かけて、やっと謝らなきゃって思えたんです」 「今更何なの?もう連絡しないって話で終わったわよね」 「あんなの間に受けないでくださいよ。お祝いや香典が少ないという理由で遠ざけたのは、あなたがたでしょう?」 「それこそ、あなたから始めたことじゃない」 「……実は、今すごく困ってて。助けて欲しいんです」  話を聞くと、リサは仕事を始めたが、息子の龍二は多忙で、保育園に入れないのだと言う。遠くの保育園なら空きがあるが、電車とバスを乗り継がなければいけない。だから、たまにはる樹の面倒を見て欲しいというのだ。 「はる樹の将来のためにお金を貯めたいんです。どうか、一ヶ月だけでいいんで」 「……あなた、何があったの?」 「親友が義母問題で苦しんでて。最初に強く出ておけばいいってアドバイスされて、それを受けちゃったんです。全部、私が間違ってました」  私はひとり、考え込んだ。あの時の仕打ちが、許せないわけではない。でも。はる樹に罪はない。私は血のつながった孫を、もう一度抱きしめたくなっている自分に気づいた。 「……分かった。夫と相談してみるわ」 … Read more

2 September 2026

「お姉ちゃんの婚約者、純平さんとベッドで撮った写真を送ったら、彼女は泣きもせずに『おめでとう』って言ってきた。『お前の子供は純平の子で確定なの?』って確認してきたかと思うと、『じゃあ結婚する気?』って。私は『当たり前でしょ』と笑い返した。でも二週間後、弁護士に呼び出されて知ったのは、純平さんに私を含めて不倫相手が4人いたってこと。しかも私は彼の子供まで妊娠していて、慰謝料はなんと200萬円。…

「あの写真、何?」お姉ちゃんがスマホを画面ごと私に見せてきた。そこには、私と純平さんがベッドで寄り添っている写真が写っていた。 「あ、見てくれたんだ。純平さん、すっごく可愛くない?お姉ちゃんの前だと、ああいう顔しないんでしょ?」 「は?何考えてるのよ」 「見たままだけど。お姉ちゃんの婚約者、貰っちゃった」 「ふざけないで」 「あ、そうそう。私、純平さんの子供、妊娠しちゃったから」 お姉ちゃんが言葉を失った。私は携帯の画面を見せながら言った。 「後で検査結果の写真、送ってあげるね。奪っちゃってごめんね。私、純平さんと幸せになるから」 「……本当に純平の子なの?」 「ガチ。最近は純平さん以外と関係なんてないし」 「おめでとう。よかったね」 「……え?何その反応?」 お姺ちゃんは泣きもせず、怒りもせず、ただ微笑んでいた。私は拍子抜けしてしまった。 「普通、婚約者取られたら泣いたり怒ったりするでしょ?」 「泣けばいいの?『よくも純平を』って言えば満足?」 「いや……そうじゃなくて」 「脳破壊されてるんだね。しばらく立ち直れないわ」 「はぁ?私の方が可愛いから純平さんが選んだんでしょ。お姉ちゃんが負け惜しみ言ってるだけじゃん」 「はいはい。じゃあ、お母さんには私から連絡しておくね。明日には愛花が事情を話すって」 「え?なんで?」 「とにかくありがとう。愛花のこと大好きよ。純平のことはよろしくね」 気味が悪いくらいに落ち着いているお姺ちゃんを残して、私はその場を離れた。負け惜しみもいいところだ。女の価値は可愛さで決まるんだから。 それから二週間後。 「まさみ、お前の元婚約者、相当やらかしてるみたいだぞ」 私の担当弁護士で、幼馴染でもある俊介が書類を机に広げた。 「やっぱりね。イケメンで高学歴なのに、まともなわけないと思ってた」 「いや、そうじゃなくて。愛花だけじゃない。不倫相手は俺も驚き通り越して呆れたんだが、全部で四人だ」 「は?四人?」 「しかも今まで証拠を掴ませなかったんだから、相当なものでしょ」 「……不倫はしてるだろうとは思ってたけど。ここ数年、明らかに帰りが遅くなったし、スマホのパスワードも変えてたから。でも、まさか四人とはね。愛花のおかげでようやく証拠を掴めたってわけか」 「そう。愛花ちゃんがお前の妊娠を暴露しただろ?純平も焦ったんだろうな。さすがに逃げられないと思って、他の不倫相手を切ろうとして連絡が雑になった。そこを探偵に写真で押さえられた」 「なるほどね」 「ついでに言えば、俺も動けるようになった。弁護士として銀行や携帯会社に開示請求ができるからな」 「やるじゃん。本物の弁護士みたい」 「本物なんだよ。まあ、これでようやく肩の荷が下りるわ。婚約破棄の前に、きっちりと落とし前をつけたかったし」 「あとはこっちに任せろ。この状況で負けるなら弁護士辞めてやるよ」 「期待してる。愛花には本当に感謝だわ。後で礼を言っておくよ」 「いい性格してんな、お前」 「ありがとう。褒めてないから」 数日後。私は純平さんの家で、夕食の準備をしていた。久しぶりの幸せな時間だ。 「あー、もう幸せすぎ。今、純平さんのためにご飯作ってます」 スマホに向かって呟く。すると、お姉ちゃんから返信が来た。 「お幸せそうで何よりね」 「もう、嫉妬?私はお姉ちゃんとは違って愛されてるから」 「そう。じゃあ、私は今日も残業だから。忙しいの」 「は?仕事できるアピール?キモい。お姺ちゃんって高学歴で有名企業に勤めてるけど、女の価値は可愛さが全てでしょ。私みたいに顔よし、スタイルよし、愛嬌よしが最強なんだから」 「そうですか。じゃあ、最強の愛花ちゃん。慰謝料、払ってくれるよね?」 「は?慰謝料?」 「不倫した上に妊娠でしょ。当然だから。二百万円、しっかり払ってね」 「二百萬?ふざけないで。向こうに魅力がないからそうなるんでしょ。お姉ちゃんに問題があるんだよ」 「日本の法律はそうなってないの。純平君を含めて、私は四人の相手に慰謝料請求するから」 「は?どういうこと?純平さんが私以外の女とも関係持ってたの?」 「私を入れて五人同時だったってこと。頭の中身まで下半身についてるんじゃないかって思ったわ」 「じゃあ……私の慰謝料は誰が払うの?」 「愛花が自分で払うのよ。どうぞご自由に」 … Read more

2 September 2026

「おい、とみ。母さんの介護、いつ来るんだよ。今すぐ来い」—…

おい、とみ。母さんの介護、いつ来るんだよ。待ってんだぞ。離婚したからって介護はしろよ。今すぐ来い。 赤の他人に、そんな義務はないんだけど。 あ、何言ってんだ?ちょっと待てって。 同じ頃、私はり子さんから連絡を受けていた。元夫・大機から「母の介護をしろ」と久しぶりにLINEが来たのだ。 「それはまた随分と。3年前に離婚されて、その後お嬢様からの連絡は一切無視してらっしゃったのに、ですよね」 「うん。久しぶりに連絡してきたと思ったらこれよ。今もしつこくLINE来てるから、とりあえず無視してるけど」 「正解です。相手をするだけ無駄ですから」 ところで、とり子さんが声を潜めた。 「今月もまた、養育費が2万円しか振り込まれていませんでした。約束の5万円から3万円の差額。3年分で108万円になります」 私はため息をついた。 「やっぱりか。もうそれが当たり前になってたわ。養育費のことでこっちが連絡した時は無視したくせに、いきなり介護しろって。さすがにどうなの?」 「本当に。そのことで、少し動いてもよろしいでしょうか?」 「何をするの?」 「それは、内緒でございます」 り子さんのことだ。何か準備をしているに違いない。 翌日、大機からまたLINEが来た。 「おい、返事しろよ。俺が離婚してやったんだぞ。少しくらい恩返ししろよ。養育費だって払ってやってるだろう。お前が出て行ってから母さんが体を悪くしたんだぞ。責任の一端はお前にもある」 「離婚を言い出したのはあなたよね。とやかく言われる筋合いはないんだけど」 「俺が言い出したのはお前のせいだろ。母さんと仲良くしてれば、俺だって離婚なんて言わなかった」 「その原因を介護しろって?頭おかしいんじゃない?誰が、介護なんてやるもんですか」 「お前さ、本当に冷たい女だな。連絡したら『赤の他人』って、子供の父親に言うか?」 「離婚してから3年間、そっちから何か連絡した?してないでしょ?」 「養育費の振り込みだって、してたじゃないか」 「約束の額を勝手に3万も減らして、してたって言えるの?」 「……でも今回だけは、1回だけ話を聞いてくれ」 同じ頃、元姑の房子さんからも電話が来た。 「とみさん、大機から話は聞いてるわよね。あの時離婚したのはしょうがなかったの。でも、子供たちの母親として、この家と縁が切れるわけないでしょ。私、足が悪くなってきてね。病院の付き添いだけでも、お願いできない?週に1度だけでもいいの」 「今の私に、介護の義務はありません」 「冷たいことを言わないで。子供たちのおばあちゃんなのよ、私は」 「法律上は、縁は切れています」 「法律、法律って。大機もあなたには随分苦労したのよ。家事も育児も中途半端なくせに」 「房子さん、それならどうして直接言ってくれなかったんですか?8年間、料理が下手とか洗濯が雑とか、全部大機さん経由でした。直接言えば良かったのに」 「……それは、あなたに言っても変わらないと思ったから」 「変わる機会すら、与えてもらえなかったんですね」 「もういいじゃない。過去のことよ。それより、あなたの身勝手な行動で、あなたの子供は祖母を失うのよ。もう少し考えて行動したら、だから離婚されるのよ」 数日後、大機から最後通牒が来た。 「おい、いい加減にしろよ。これ以上だらだらするなら、子供への養育費払うのやめるからな」 「何言ってるのよ。3年間、約束の半分しか払ってないのに」 「まだ払ってるだろう。感謝しろよ」 「養育費は義務よ。感謝なんてしないわ」 「……大体俺は、最初から子供なんて欲しくなかったんだよ。お前が産みたいって言ったから、産ませてやったんだろ」 その言葉に、私は言葉を失った。 「な、なんですって?」 「払う義理なんてない。だってお前が勝手に産んだんだろ。むしろ産ませてやったんだから、感謝しろよ。とみ、返事しろよ」 「今の言葉、本気なのね」 「なんだよ、大げさな。事実だろ」 「子供たちに、謝って」 「は?何言ってんだ?『生ませてやった』って本当のことだし。今更何だよ」 「もういいわ。そうね。あなたは変わらないわね。期待したこっちがバカだったわ」 1時間後、私はり子さんに打ち明けた。 「大機に言われたわ。子供は最初から欲しくなかった。生ませてやったんだって。私たち家族を最初からそんな目で見てたんだ。子供たちには絶対に知らせたくない。でも……悔しくて」 「それではお嬢様、その気持ちを相手にぶつけましょう」 「え?」 「弁護士はすでに手配しています。支払っていない養育費の差し押さえ申請は、来週には動けますよ」 「本当に……いつの間に準備を」 … Read more

2 September 2026

「タワマン買ってあげるから、離婚してくれる?」3年連れ添った夫が、新しい家の鍵を手にしたその日に言った言葉です。彼は私の貯金3億を当てにし、若い愛人とそのタワマンに住む計画を立てていました。「お前の預金は3億あったはずだぞ」と、離婚後に笑いながら電話してきた元夫に、私はこう言ってやりました。「うーん、正確にはもう使ったと言った方が正しいかもね。」彼が気づいていない、たった一つの大事な真実を私…

「タワマンに住みたいな」 ミキと結婚して3年、突然夫が言い出した。彼は小さな会社の社長で、いつもより輝いて見えた。 「そろそろ次のステージに行ってもいいんじゃないかな。それがタワマンに住むこと」 「芸能人でも無理して高い家賃の所に住むって言うじゃん。そうすることでさらに売上が上がるかもよ」 ミキは反対しなかった。駅前のタワマンに空きがあると聞けば、一緒に見に行くと言ってくれた。 「実はもう俺、モデルーム見てきたんだ」 「名義はもちろん俺でいいよ。支払いだけ手伝ってくれたら」 「もちろん協力して払うよ」 ミキは疑うことを知らない。そんなミキが少し可愛く見えた。 数分後、夫は別の女に電話をかけていた。 「あいつアホだからさ、ちょっとおだてたら買おうか。だってちょろすぎて笑い止まらんわ」 「契約したら即離婚してやるんよ。あの銭使い女がごねたら無理じゃない?」 「大丈夫だって。ああいう女はプライドが高いから泣きついたりすがったりしないもんなんだよ」 相手はリオ、夫の愛人だった。 「LINEの履歴は必ず消す。写真もだ」 「鍵をもらうまでは会社以外では合わない。ここでバレて探偵でもつけられたら全部終わるぞ」 「あいつの貯金が3億くらいあるのは分かってるんだ。1億のタワマン買っても懐は痛まない」 「本当、銭使いだよね。し君にあげないで貯め込んでるんでしょ。将来のためとか言ってるけど、お前との将来なんか考えてねえって」 二人の計画は完璧に思えた。 数日後、マンションギャラリーから帰ってきた夫はミキにこう報告した。 「地方のタワマンって8000万くらいなんだね。1億ちょいじゃなかった」 「買うなら最上階しかないだろう」 ミキは反論した。 「3階が空いてたからそこにしようかと思うんだけど」 「はあ? そんなのタワマンでも何でもないだろう」 「2階は駐車場だし、将来子供が走り回っても気を使わなくていいし。良くない?」 「いやいや、なんで勝手に決めるんだよ」 「ごめん。でも1億超えたらさすがにあなたの名義でローン通らないでしょ」 夫は歯を食いしばった。年収1000万でも、8000万のローンを組めば月々の支払いは25万円を超える。手取りが50万ちょいなら、半分以上が消える計算だ。だからこそ、ミキに全額払わせる必要があった。 3週間後、ローンの本審査が通った。ミキが保証人になってくれたからだ。 「夫婦だもん。当然だよ」 ミキは笑った。それを見て、夫は少しだけ罪悪感を覚えたが、リオとの未来を考えれば迷っている余裕はなかった。 「俺は見えを張るためにミキと結婚したんじゃない。最上階の憧れはあったけど、俺が欲しいのはミキとの生活だから」 ミキがその言葉をそっくりそのまま信じてくれた時、夫はリオにLINEを送った。 「ああ、ちょろいわ。ちょろすぎて引くわ。リオが言ってくれた言葉、そっくりそのまま送ったらすっげえ喜んでんの」 二人は笑い転げた。 1ヶ月後、タワマンの鍵を手に入れた。夫はミキに離婚を切り出した。 「悪いんだけど、離婚してくれないかな」 「へ? 何言ってるの? 家買ったばかりだよ」 「分かってる。でもミキとの未来が思い描けなくなったんだ」 「本当に悪いと思ってる。謝って済む話じゃないと思うけど。タワマンは俺が住むよ。その前に大事な話がある。財産分与を要求する」 「お前が起業してこの3年、俺は支えてきたよな。最初の1年は赤字だっただろう。だったら2年目以降の会計繰りは俺の功績と言っても過言ではない。だから半分を要求する」 ミキは冷静だった。 「争うなら調停とか裁判になるけど、どうする?」 「離婚でいいわよ。嫌われてる人と一緒には暮らせないでしょう」 「助かるよ。財産分与の件も問題ないの?」 「分かった。手続きしておく。財産を隠しても無駄だからな。弁護士会紹介という方法を使えばあなたの資産を調べることができるんだ」 ミキは淡々と答えた。 「よく知ってるのね。めんどくさいことにしたくないから、ちゃんと半分振り込むわよ。色々と現金化しないといけないものもあるから、3ヶ月くらい時間が欲しいの」 夫は心の中でほくそ笑んだ。ミキの貯金は3億。1億5000万が自分のものになる。タワマンのローンを一括返済しても、まだ7000万も残る計算だ。 「分かった。こっちも弁護士通して連絡する」 3ヶ月後、振り込みが完了し、離婚届も提出された。夫はリオとタワマンで新婚生活を始めた。リオは料理を頑張ると張り切り、夫は夜景を見ながらワインを飲む日々に浸った。 … Read more

2 September 2026

「サトシが息を引き取ったその瞬間、妹と夫は温泉旅行でキャッキャウフフしてたのよ。そして、葬式の日に妹はケロッとした顔で現れて、『ちょっと熱があっただけでしょ?なんで死ぬのよ』って言ったの。医者にも『もう少し早く来ていれば』って言われた。私たちは、あの時、二人がスマホの電源を切ってデジタルデトックスなんかしてなければ、息子はまだ生きていたかもしれない。私は妹にこう言い放った。『あんたはもう、私…

「マミー、さっき送った写真、見た?」 「はあ?何の写真?」 「楽しい思い出を共有しようと思ってね。お姉ちゃんの旦那さんと、温泉旅行に来てるの。奪っちゃってごめんね。彼とすごく相性がいいんだよね。」 「あんた、自分が何をしてるか分かってるの?」 「もちろん分かってるよ。でもしょうがないでしょ。私たちは相思相愛なんだから。その邪魔をするのは良くないよ。」 私は妹からの開いた口が塞がらない言葉に、ただ呆然としていた。妹のマミは、私の夫であるアキラと一緒に写っている写真を送りつけてきたのだ。しかも浴衣姿で、旅館にいるのは明らかだった。彼女はまるで勝ち誇ったように話を続ける。 「お姉ちゃん、いつも社会的な地位とかでマウント取ってくるじゃん。だからアキラさんもそういうところが嫌だったんだよ。もし本当に愛し合ってたら、こんなことにはなってないわよ。形だけの夫婦でしょ?」 「違うわ。そんなこと…」 「子供だっていないんだし、さっさと離婚した方がお互いのためよ。手続きもそんなに面倒くさくないでしょ?私、お姉ちゃんのためを思って言ってるんだからね。いいから離婚届を用意しておいて。じゃあ、私はこれからまたお風呂に行くから。よろしくね。」 電話を切った後も、マミの言葉が頭の中で反響していた。怒りと悲しみで胸が張り裂けそうだったが、そんな時、今度はアキラから電話がかかってきた。 「キラ、今どこにいるの?」 「どこって…それはもうお前に言ってあるだろ。」 「あんたが『出張』なんて嘘をついていることは分かってるのよ。さっきマミから連絡があったの。あんたと楽しそうに旅行してる写真が送られてきたわ。」 「は?マミが?」 「そうよ。あんたは私を裏切ってたってことね。よりによって妹に手を出すなんて、どういうこと?」 「いや、違うんだ!俺だって最初からそういうつもりじゃなかったんだ。マミから『離婚してシングルマザーになったから、話を聞いて欲しい』って相談されたんだ。お前には言い出せない内容だって言うから、兄として会っただけなんだよ。そしたら、なんか迫られて…それで、ちょっとした遊びのつもりだったんだ。」 「遊び?あんた、自分が何を言ってるのか分かってるの?」 「お前との生活はもちろん楽しかったけど、ちょっと刺激がなくてマンネリしてたんだよ。だから、スパイス程度に…」 「ふざけるな!そんな言い訳が通ると思ってるの?」 「頼むよ。こんなこと言われるようなことをやってるのはそっちだろ。とりあえず、冷静になろう。明後日の朝にはチェックアウトするから、帰ったらちゃんと話をしよう。それまで連絡はしてこないでくれ。俺も混乱してるんだ。」 「あんた、ここまで言われてるのに不倫旅行を満喫するつもりなの?」 「高い旅館なんだよ。途中で帰るのはもったいないだろ。」 「あんたがそんな態度なら、もう帰ってこなくていいわよ。私もやることはやるから。」 「ちょっと待て!マミともしっかり話をしないといけないんだ。そのための時間であって、決して楽しんでるとかじゃない!」 「あ、そう。マミがあなたと結婚するつもりみたいよ。そこでプロポーズでもすれば、きっと喜ぶわよ。」 「………俺は、そこまでの気持ちは…」 「だったらさっさと帰ってきなさいよ!」 電話は、アキラの一方的な言葉で切れた。彼は『混乱しているから連絡をしてくるな』と言い残した。私は深い絶望と共に、ソファに崩れ落ちた。 それから5時間後。今度は母から緊迫した電話がかかってきた。 「リサ、大変なの!サトシがすごい高熱を出して、うなされてるのよ!」 「え?サトシが?どうして母さんがサトシを見てるの?」 「マミから『出張だから預かってくれ』って言われてたのよ。でも、うちに来た時から元気がなくて、夜になったら急に容体が悪化して…もう救急車は呼んだんだけど、なかなか来るのに時間がかかって…!マミにも何度も電話してるのに、全然繋がらないのよ!」 「何をしてるのよ、あの人は…!分かった、とにかく母さんはサトシのそばにいてあげて!私の方でもマミに連絡を取ってみる!それと病院が決まったら教えて、すぐにそっちへ行くから!」 「お願い…。なぜか分からないけど、マミにだけは全く連絡が取れなくて…」 あの日、アキラから『連絡をしてこないでくれ』と言われたのは、まさにこのタイミングだった。私は必死に彼とマミに電話をかけたが、どちらにも繋がらない。デジタルデトックスだと称して、2人とも電源を切っているようだった。 2日後。私は葬儀場に立っていた。真っ白な花に囲まれた、小さな遺影。それが、私の最愛の息子、サトシだった。容体が急変したその夜、救急搬送されたものの、帰らぬ人となっていた。 葬儀場に、マミが現れた。 「お姉ちゃん、マジで鬱陶しいんだけど。なんであんなに着信履歴を残してたの?…って、何その格好。お葬式?誰が死んだの?」 「…サトシが、亡くなったのよ。」 「は?意味が分からないんだけど。サトシは実家に預けてたでしょ。ちょっと熱があったくらいでしょ?明日には治ると思ってたよ。」 「あんたは、病気の息子を置いて不倫旅行に行ったのよ!母さんが『体調が悪いんじゃないか』って聞いた時も、『心配ない』って答えたんでしょ?」 「だって、妊娠したとか大事な話だったらどうしようと思って…。それに、お姉ちゃんの子どもが熱を出すなんて、何回もあることじゃん。なんで今回だけこんなことになるのよ…」 「もういい。あんたには関わりたくない。帰って。」 「ちょっと待ってよ!私だって混乱してるんだから!」 そこへ、母が現れた。その目は、私が今まで見たことがないほど怒りに燃えていた。 「マミ、あんた…よくも…!サトシは苦しみながら、あんたの名前を呼んでたんだよ!それなのに、あんたはどこにいたんだ!」 「お母さん、私だけを悪者にしないでよ!今はそんな話をしてる場合じゃ…」 「あるに決まってるでしょ!息子を一人にして、不倫なんてして!あんたはどれだけこの家族を不幸にしたら気が済むんだ!」 「だって、好きになったんだから仕方ないじゃん!」 「大人なら、理性を持って行動をしなさい!前の旦那さんだって、あんたのそういう考えなしなところが嫌で愛想を尽かしたんでしょ!」 「あいつのことは今関係ない!説教はいいから、葬儀場はどこ?私、行くから!」 「もう葬儀は始まってるわ。今から来たって間に合わない。そして、あんたはもう私の娘じゃない。私たち家族だと思わないでちょうだい。絶縁よ。」 「…え、絶縁って…そんなのひどいよ!お父さんは?お父さんは何て言ってるの!」 「お父さんは、最愛の孫を失って、気も狂わんばかりに落ち込んでるの!食事も喉を通らないって言うのに、あんたの話なんてできるわけないでしょ!」 「そんな…。せめて葬儀場だけでも教えてよ…!」 … Read more

2 September 2026

母から突然の電話でした。「結婚式にあなたたち家族は来なくていい」って。私は呆然と「どういう意味ですか?」と聞き返しました。すると母は平然と言ったんです。「娘の結婚式に貧乏人一家なんて呼ぶわけないじゃない」って。しかも「でも、ご祝儀は多めに包んでね」と、まるでそれが当然のように続けたんです。その日の夕方、今度は妹からも「お姉さんたちがいると浮くから来ないで。でも結婚式のお金は出してね」と連絡が…

「みきさん、マリ子の結婚式の件だけど」 「はい、何でしょうか」 「あなたたち家族は来なくていいから」 「え?どういう意味ですか?」 「言葉通りよ。マリ子の結婚式に、あなたたち家族は招待しないってこと。勝手に来ないでちょうだいね」 「ちょっと待ってください。それはどういう判断で?私たち、何かしましたか?」 「判断も何もないでしょ。最初から決めてたのよ。娘の結婚式に、貧乏人一家なんて呼ぶわけないじゃない」 義母は電話口で、平然とそう言い放った。 「貧乏人…私たちがですか?」 「そうよ。他に誰がいるっていうの?」 「でも、私たちは何も…」 「いい?あんたたちみたいな家庭が来たら、式の格が下がるの。来ないでちょうだい」 「格って…そんなことを言われても」 「貧乏人は格がわからないから教えてあげるけど、結婚式っていうのはね、誰を呼ぶかで価値が決まるの。変な人間が混ざると台無しになるのよ」 私は必死に言葉を選んだ。 「私たち、お母さんの前で非常識なことはしていないはずです。むしろ、突然『貧乏人は来るな』と言われる方が非常識だと思いますが。どこを見て、貧乏人だと判断されたんですか?」 「は?何?今さらそんなこと言ったらキリがないわ。結婚式も挙げられなかったくせに、何言ってるのよ。普通は結婚する時に、ちゃんと式を挙げるの。それができなかった時点で、わかるでしょ」 「私たちは挙げなかっただけで、それも夫婦で話し合って決めたことです」 「強がらなくていいのよ。お金がないからできなかった。それだけでしょ」 義母はさらに続けた。 「それに、まだあるわよ。ご祝儀だってそうじゃない」 「ご祝儀?きちんと相場通り、渡したはずですが」 「あの金額で、よく平気でいられるわね。相場?長男の嫁なら、もっと包むのが常識でしょ。妹の結婚式なのよ。それをあんな少ない額で済ませるなんて、恥ずかしいと思わないの?」 「失礼ですが、事前にご祝儀を『くれ』と催促してきたこと自体、あまり一般的ではないと思いますが」 「何それ?言い訳?だから貧乏人は嫌なのよ。常識がないんだから」 私は、もう何から突っ込んでいいのかわからなくなっていた。 義母は、とどめの一言を刺した。 「それなら、決定的なことを言うわ。健太の態度が、何よりの証拠よ」 「健太さんが、何か言いましたか?」 「あの子、あなたの実家の話を、ほとんどしないでしょ。普通は嫁の実家が立派なら、少しくらい自慢するものなのよ。それが一切ないってことは、どういうことかわかる?」 「わかりません」 「自慢できる要素がないってことよ。つまり、お金がない貧乏だから話せない。それだけの話でしょ」 私は、義母が本気でそう思っていたことに、ただ呆然とした。 「周りを見なさい。結婚式に呼ぶ人間っていうのはね、それなりの家の人たちなの。ちゃんとした仕事をして、ちゃんとした暮らしをしている人たち。そういう人たちの中に、あんたたちみたいなのが混ざったらどうなると思う?」 「浮く、と言いたいわけですね」 「そうよ。浮くだけならまだいいわ。恥をかくのはこっちなのよ。『ああいう人たちを呼んでるのか』って笑われるのは、こちらの身なの。わかる?だから来るなって言ってるの。当日は家で大人しくしてなさい。式場に近づくこともやめて。見かけたら本当に困るから」 そこまで言われる理由が、私にはどうしても理解できなかった。 「理解する必要はないわよ。従えばいいの。それだけ。何か問題でもあるの?」 「問題かどうかは別として、かなり一方的なお話だと思いますが」 「結婚式はこっちのものよ。誰を呼ぶか決めるのもこっち。口出しする権利なんて、あんたにはないわ」 「それに、あんたたちみたいな人間が来ると、他のゲストに迷惑なのよ」 「迷惑?なぜですか?」 「だって、マナーもわからないでしょ。ちゃんとした場に出たことないでしょうから。失礼なことをするに決まってるのよ」 「そんなことをすると思われるような振る舞いは、していないはずですが」 「義母の前では気を遣うでしょ。自分で言う?それに結婚式なんて浮かれちゃうし、本性が出やすいものよ」 「…そうですか」 「何よ、その反応」 「別に。ただ、疲れました」 「強がらなくていいのよ。悔しいなら、悔しいって言えば」 「いえ、事実と違うので。お母さんって、こんなに人の話を聞かないんだな、と思っただけです」 「話を聞かないのは、あんたの方でしょ。全く、親が親なら子も子だわ」 「…なんですって?」 「だって、あんたの子供たち、可愛くないもの」 私は凍りついた。 「あの子たちが、何かしましたか?」 … Read more

2 September 2026

「お前が中卒だってこと、取引先にばらすぞ。騒ぐならお前の会社を終わらせるからな」…

「式場の打ち合わせは全部あなたがやりなさい。私は忙しいの。全部あなたが決めていいわ。ただし、谷家の格式に恥じない内容にしなさい」 そう言われた時、私はただ頷くことしかできなかった。婚約者・たヤさんの母親、霧谷さんは最初から私を「中卒の嫁」としてしか見ていなかった。 「わかりました。頑張ります」 「そうね。立派にやりなさいよ。費用にケチをつけてはいけないわ。こういうのは見えが肝心なんだから」 「ですが、あまり高額だと大変ですし、きちんと予算を立ててやりますね」 私がそう言うと、霧谷さんは鼻で笑った。 「何言ってるの?全額あなた持ちに決まってるじゃない。うちは1円も出さないわよ」 「全額ですか?でも両家の結婚式なんですよ」 「だから何?花嫁が主役なんだから、花嫁が全額負担するのが当たり前よ。最低800万は必要ね。桐谷家の名を恥じない式にするなら」 「800万全額はさすがに厳しいです」 「文句あるの?中卒のあなたが桐谷家に嫁げるだけでも感謝すべきなのよ。うちは全員大卒。あなたみたいな中卒がうちに入るだけで恥なの。せめてお金くらい出しなさい。それがあなたにできる唯一の貢献でしょ」 「お母さん、確かに私は学歴はありませんが、15歳から会社を経営しています。『唯一』というのは侮辱です」 「会社?あの弁当屋のこと。中卒が弁当屋やってるのを経営って呼ぶのね。偉いわ、尊敬しちゃう。自己評価だけは立派で」 「規模で経営を判断するものではないのでは?小さくてもお店を持ってる人は皆経営者です」 「規模は大事よ。うちは都内に20棟のビルを管理してるの。弁当屋と一緒にしないでちょうだい。とにかくちゃんとしてね。経営者なら800万くらい出せるはずだし」 その夜、私はたヤさんに相談した。 「たヤさん、お母さんから式の費用800万全額私が出すように言われたんだけど」 「ああ、ごめん。嫌な思いさせて。母さんは学歴のことになると頑固でさ。またなんか言ってるってくらいで受け流しといて」 「あの、止めてくれない?全額はさすがに」 「分かった。俺からも言うよ。でも今会社がバタバタしててすぐには動けないんだ。一旦立て替えてくれないか?後で半分出すから。約束する」 「本当に?」 「ああ、ていうか当たり前だろ。俺とお前の結婚式なんだしさ。女に全額出させるとか格好悪いじゃん」 その言葉に、私は安心してしまった。15歳で両親を亡くし、一人で弁当屋を守ってきた私にとって、家族になれるという約束は何より嬉しかった。 三週間後、たヤさんがまた相談を持ちかけてきた。 「あのさ、悪いんだけどもう一つ相談があるんだ」 「相談?どうしたの?」 「会社の設備投資で急に資金が必要になった。1200万ほど融通して欲しくて」 「1200万?たヤさん、前に渡した分と合わせたら2700万よ」 「分かってる。でも今回の投資がうまくいけばまとめて返せるんだ」 「会社の不動産はビル20棟管理してるんでしょ?その利益で1200万が出せないの?」 「ビルの修繕費が重なっててな。一時的な資金繰りの問題だ。一気に建てたから一気にメンテが必要でさ。お前だって店舗の改装で赤字になったこともあるだろう」 「それはあったけど」 「俺たちは規模が違うから、これでもまだマシなんだよ」 「それはそうかもしれないけど」 「俺たちは家族になるんだろ。家族の会社を助けるのは当然じゃないか。15歳から一人で生きてきたお前に、家族を作ってやりたいんだ。だから今は俺を支えてくれ。頼む」 「分かった。融通してみる」 「ありがとう。さすが未来の花嫁だ」 半日後、私は経理部長のり子さんに帳簿をお願いした。 「り子さん、ごめんなんだけど、資金が必要になったの。お願いできる?」 「かしこまりました。何の資金でしょうか?」 「たヤさんにお金を出すことになって、合計2700万」 「お嬢様、またですか?入れると3500万になります」 「さすがに少々行きすぎでは」 「でも私もお弁当屋の改装工事で資金繰りに困っていたし。銀行で借りると利息もあるわ。身内から借りたい気持ちも分かるの。実際私もおばさんから借りてたから」 り子さんは深く息を吐いた。 「お嬢様、はっきり申し上げますが、たヤ様は綾野さんを見ていません。綾野さんのお財布を見ているのです」 「り子さん、そんなこと言わないでよ。彼だって頑張ってるし」 「私は綾野さんを赤ちゃんの頃から見てきました。ご両親が亡くなったのが15歳の頃。進学を諦め、ご両親のお弁当屋を守ると、お一人でお弁当を作っていたのを覚えています。あの小さな弁当店を今の規模にしたのはお嬢様自身です。そのお嬢様が3500万を絞り取られている。このまま黙って見ているわけにはいきません」 「でも、たヤさんは私を認めてくれた唯一の男性なの」 「学歴がないことは恥ずかしいことではありませんよ。15歳で社会に出て一人で会社を作り上げた。それは大学4年間で得られるものよりはるかに価値があります。それを認められないのは周りではなく、お嬢様自身では?」 「学歴がないことは恥ずかしいこと。そういう偏見は確かにあります」 「どうかご自分をこれ以上責めず、目を覚ましてください」 「ごめん、り子さん。今はたヤさんを信じたい。ちゃんと話し合うわ」 「わかりました。ですが、私は私でやるべきことをやらせていただきます」 一週間後、霧谷さんから思いもよらない言葉が告げられた。 … Read more

2 September 2026

「ねえ、うちの駐車場に紫の車が止まってたんだ。ファー敷いて、後部座席にぬいぐるみが山積みの、どう見ても昭和のレディースが乗ってそうな車。もちろん、あの義姉の車だよ。連絡したら『身内なんだから優先されて当然でしょ』って言われたんだ。あんた、笑っちゃうよね。でも、義姉にはある秘密がまだあるんだ。私はそれを知ってしまって、どうやら事態は思ってたよりずっと複雑なことになりそうなんだ。」…

「あの、うちの駐車場に止めてある紫の車、動かしてもらえませんか?」 私は、夫の弟の妻であるしおりさんにそう連絡をした。彼女が私に駐車場を貸してくれてから、もうすぐ一週間になる。確かに、最初の二日間は我慢した。でも、三日目になっても、その派手な車は私の駐車場に居座り続けていた。紫のボディに、ダッシュボードにはファー、後部座席には大量のUFOキャッチャーのぬいぐるみ。正直、あれが誰の車かはすぐに分かった。義姉の車だ。 「え、そんなに止められてたの?ごめんね!張り紙もしたし、すぐに移動させるから!」 しおりさんは謝ってくれた。でも、私が貼った張り紙は、破り捨てられていた。それでも、しおりさんは「保証するから」と言ってくれたので、私はその間にコインパーキングを使うことにした。数日後、今度は私の夫の携帯に、義姉から直接電話があったらしい。夫は駐車場で待ち伏せして、ようやく戻ってきた義姉を捕まえたのだ。 「お姉さん、うちの駐車場に車止めてますよね?」 「はあ?何を根拠に言ってんのよ」 私が電話口で義姉にそう言うと、彼女はしらを切った。でも、私は証拠の写真を送った。しおりさんからもらった、駐車場に止まっている紫の車の写真だ。 「この令和の時代に、その特徴を併せ持つ車に乗ってるのは、お姉さんしかいませんよ」 「友達にもいるわ!それは累が友を呼んでるからよ!」 「何が言いたいんですか。車をどかしてください」 「無理よ。順番って分かるでしょ。私のママ友が先に契約して、お金も払ってるんです。でもお姉さんは無断で勝手に止めてますよね」 「それが何?身内なんだから、私が優先されて当然でしょ!」 私は呆れた。義姉は離婚して、マンションも追い出されたから、車を止める場所がなくなったと言い出した。でも、それはこちらの事情ではない。私は「レッカーしますよ」と告げた。すると義姉は「やめてよ」とようやく折れた。そして、数日後、彼女はようやく車を移動させた。 「ごめんね。迷惑かけたけど、すぐに移動させるから」 しおりさんにそう言われた時、私は彼女に全く怒っていなかった。むしろ、気を使わせてしまって申し訳なかった。幼稚園の運動会で、私と娘が浮いていた時、最初に声をかけてくれたのも彼女だった。義姉の非常識さに悩まされながらも、しおりさんという友達がいることが、どれほど心強かったか。 —— それから半年が経った頃。私は軽井沢への旅行から帰ってきた。家の鍵を開け、荷物を下ろしていると、スマホにメッセージが届いた。しおりさんからだった。 「旅行から帰ってきたんだけど、また駐車場が埋まってて…」 私は血の気が引いた。またあの義姉の仕業だ。どうやら彼女は、私たちが一週間不在だったことを見計らって、また駐車場に車を止めたらしい。しおりさんは「今回は絶対にちゃんとする」と言ってくれた。彼女の夫も、駐車場で待ち伏せして義姉を捕まえてくれた。しかし、義姉は全く反省していない様子だった。 「おい、非常識な元ヤンが何か言ってるぞ」 「はあ?急ぎ着って何よ。意味不明なんだけど」 「急ぎ着には脳がない。記憶する機能がない。お前と同じだろうがよ」 義姉は夫を「非常識」と罵り、自分の行為を正当化しようとした。そして、私たちにこう言い放った。 「半年間ただで止めさせてくれてサンキュー。得したわ」 私は怒りで震えた。夫も我慢の限界だった。彼は駐車場に立ててある看板を指差した。そこには「無断駐車はレッカー移動、料金は実費負担」と書いてあった。義姉は「たかが身内から金取るの?」と逆ギレしたが、夫は引かなかった。すると義姉は、なぜか夫に向かってこう言った。 「あんた、もしかして元ヤンだったりする?」 「だったらなんだよ」 「どこに所属してたの?」 「…姉もそうだ」 「は?あの伝説の?」 その瞬間、義姉の態度が一変した。夫が「姉は5代目早朝」と名乗った途端、彼女は目を輝かせて食い付いてきた。実は、義姉は若い頃からヤンキー文化に異常なほど憧れていて、自分も特攻服を持っているらしい。夫はそのことを利用したのだ。後で夫は白状した。 「姉貴のヤンキーへの憧れは異常だよ。中学生の頃、俺の貯金箱から金盗んで特攻服作ってたからな。あの恨みは今でも忘れてない」 義姉は夫の話を聞いて、素直に車を移動させた。その日から一週間ほどは、平穏な日々が続いた。しかし、一週間後、しおりさんから再び連絡が来た。 「はなさん、本当にごめんなさい。やっぱり駐車場を解約させてもらうね」 理由を聞くと、私の車のボンネットに毎朝ゴミが置かれているというのだ。夫が仕事に行く前に、毎回ゴミを捨てなければならない。明らかにうちの車だけに置かれているらしい。義姉の嫌がらせだ。しおりさんは新しい駐車場を自分たちで契約し、その初期費用と半年分の料金を私に渡そうとしてくれた。私は断ったが、彼女は頑として譲らなかった。 「トラブルが長引いたのも、義姉の暴走を止められなかったのも、全部私の責任だから。これだけは受け取って」 しおりさんはそう言って、私に振り込んだ。私は彼女に改めてお礼を言った。彼女は優しく笑ってこう言った。 「はなさんがやったわけじゃないでしょ。私こそ、いつもよくしてくれてありがとう。幼稚園で一人で浮いてた私に、最初に声をかけてくれたのははなさんだったんだよ」 —— 数日後、私は義姉に直接会いに行くことにした。彼女は相変わらず自分の行為を「悪くない」と言い張った。私は彼女に言った。 「人の信頼は積み重ねですよ。お姉さんは、人を裏切り続けてきた実績しかないじゃないですか」 すると義姉は逆上した。「うるさい!このまま駐車場は借りるから!」と叫んだ。でも、私はもう彼女に遠慮する必要はなかった。 「うちのママ友は、新しい駐車場を借りるはめになりました。人に損害を与えて、責任を追わずに済むと思わないでくださいね」 翌日、私は義姉にメッセージを送った。駐車場を実際に使っていた期間の料金と、しおりさんが新しく借りた駐車場の初期費用、そして迷惑料として、いくらかを振り込んだ。義姉は「そんな迷惑料なんていいのに」と控えめに言ったが、私は譲らなかった。これだけは受け取ってほしいと頼み込んだ。 —— あれから一ヶ月が経った頃、しおりさんから嬉しい連絡が来た。義姉は、何度も逃げ出そうとしているらしい。でも、私たちは彼女がある人物の会社に就職する手配をしていた。その人物の名前は「霊下さん」。かつて、伝説のレディースの初代総長だった人だ。しおりさんは昔、その世界にいたらしい。義姉が憧れていた人物の一人だった。 義姉は霊下さんの会社で働き始めた。肉体労働はきついようで、最初は逃げ出そうとしたらしいが、霊下さんに厳しく指導されて、なんとか続けている。結局、彼女は自分の借金を返すために、今もその会社で働き続けている。かかった損害額は、駐車場代、修理代、迷惑料を含めて総額100万円。義両親には借金のことが知られ、実家への出入りも禁じられた。 あの紫の車は、車検代すら払えず、露頭の駐車場でナンバーを外されたまま放置され、最終的には廃車になった。 現在、私はしおりさんと変わらず仲良くさせてもらっている。父から受け継いだ駐車場は、今もちゃんと経営を続けている。たまに、あの義姉のことを思い出す。彼女は今、少しずつだが、真人間になりつつあるらしい。もう二度と、あんな迷惑をかけられることはないだろう。

2 September 2026